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4th Crime 5
「わームヅ!これ、志月これ何て読むんだ?」
歴史の教科書を開いて、暁が志月に顔を寄せた。大きな声で大袈裟に難しそうな顔をして聞く。落ちてしまった空気を引き上げようと、わざと明るくしてくれている。志月にはそれが分かって、胸が暖かくなる。
「|綜芸種智院《しゅげいしゅちいん》。空海の作った…私立学校みたいなもんかな」
薄暗くなって文字が見辛いこともあり、二人の距離は自然に近くなる。緊張するような気持ちもあるが、お互いの髪が触れ合う位置が、それでも志月は心地よかった。
「俺さあ一ヶ月だけ高校生だったけど社会科って好きだったな」
たまに教えろよ歴史、そう言って暁が教科書を閉じる。志月が小さく笑って頷いた。それでも二人の距離はそのままだ。
「俺は悪いことしか教えらんねーなあ」
「…タバコ、吸ってみたいな」
目の前で暁が銜える煙草の小さな灯りを志月が見つめる。
「タバコ?ああ、いいぜ、ほら」
暁がポケットから煙草の包みを出したが、志月は暁の唇から煙草を取った。何故そんなことが出来たのか分からないが、彼が口にしていたものがいいと思った。
為されるがまま、暁が煙草を唇から離す。自分が銜えていたそれを、志月が銜えるのを暁はじっと見つめていた。何かとても神聖な儀式のような感覚に襲われる。
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