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4th Crime 6

 志月が銜えた煙草を大きく吸った。 「ぐっ…ゲホ、ゲホッ!」  志月が大きく咽せて煙草を落とした。  見惚れていた暁が我に返ったように落ちた煙草を拾って、割れたコンクリートの床に擦り付けて火を消した。 「バッカ!最初からそんな吸い込むなよ」  大丈夫かと言いながら暁が志月の背中を撫でる。 「喉…痛い…」  暁は優しく志月の肩を起こすと、俯き咳き込む顔を覗き込んだ。 「あはは、涙目」  暁がその長い指で、志月の目に溜まった涙を拭う。潤んだ目はタバコの煙のせいだけではない。そう分かっているから、暁は志月の涙を何度も何度もゆっくり拭った。  至近距離にある、お互いの瞳。  煙の匂いの混じる吐息がお互いに分かる距離。  夕日が最後の光りを放って燃え尽きた時、二人の唇が重なった。

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