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4th Crime 9
志月は咄嗟に上着を脱いでガラスを払った。顔を上げた瞬間頬を殴られる。開かれたままのドアにぶつかり、志月は廊下に倒れた。
「あなたはどうしてそんなに出来が悪いの!」
ああ…
さっきまで、あんなに幸福だったのに。
殴られた頬から、暁の唇の感触が消える。
罵られることよりも、その事が志月にはたまらなく辛かった。
「…街にいた」
自分でも驚くくらい低い声が志月の口から漏れる。黒い塊が地を這うような、そんな音。
「何?」
苛立った口調のまま聞き返す母を、志月は半身を起こして睨んだ。
「街にいた!大事な人といたんだ!」
志月が叫んで立ち上がる。いつもと違って口答えしてきた志月に驚き、母が怯む。
「こんな所より、ずっと息が出来る場所にいたんだ!」
言い捨てて志月が家を飛び出す。
ただただ全力で走った。迷わず駅へ向かい『街』へ出た。
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