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4th Crime 10
「あ、服…」
いつもは駅のトイレで着替えて出ていくのだが、荷物は置いてきてしまった。ジャケットこそ着てないが制服のままだ。
それでも志月は駅を出て駅前広場を横切る。これから始まろうとしている街の喧騒。この場所に来るようになって分かったことがある。
自分が思うより、誰も自分を気には止めない。
それが居心地がいい。
さすがに事件のあった場所には足は向かないが、最初の頃のように怯えてこの街を歩くことは無くなった。それに、行先は繁華街ではない。
暁に会いたい。
さっき別れたばかりなのに驚くだろうか?
何かあったのかと、優しくキスしてくれるだろうか?
「志月!」
呼ばれて振り向く。
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