47 / 85

4th Crime 14

 暁の握られた両手が微かに震えているのに志月は気付いた。俯く背中も、小さく揺れている。 「暁…?」  志月が部屋に上がり暁の後ろに立つ。背中に触ろうとして、触れられないその雰囲気に気圧されて止める。 「…怖かった」 「え?」  意外な言葉が暁の唇から漏れ、志月の心臓が鳴った。 「クスリは人間を壊す、そんなの知ってる。知ってて売ってる。生きるために売ってる」 「あかつ…」 「でもお前が壊れんのは嫌だ!怖い!」 「………っ」  薄いカーテンの間をぬって差す月明かりが、振り向いた暁の目にうっすら浮かぶ涙を照らす。志月が息を止める。 「…ハンカチくれただろお前」 「え?」 「覚えてねーかもしんねえけど」  志月は初めて街に来た夜を思い出す。喧嘩をして血を流していた少年、あれは…。 「あれ、暁だったんだ…」  暁が哀しそうに小さく笑う。 「初めてだったんだ、この街に来て…優しくされたの」  暁が顔を上げる。じっと志月の目を見つめる。 「お前はただ、ケガしてる人間をほっとけなかっただけかもしんねーけど…」  志月が首を横に振る。確かに自分もあの時、少年に惹かれた。

ともだちにシェアしよう!