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4th Crime 15

「だから俺は、最初からお前のこと…」  運命だと思ったのは間違いではなかった。志月が確信する。もう暁以外に考えられない。志月が胸を押さえる。愛おしさが込み上げる。 「だから俺は志月がこっち側に来ればいいとずっと思ってた。この手の中にいればって…でも違うんだな」 「暁?」  暁の手が志月の頬を包む。母に殴られて少し赤くなっているその頬を癒すような大きな手。志月が求めて止まない温もり。最初から自分だけを見ていてくれた人の温もり。 「本当に大切な人って、汚したくないんだな…」  暁の中に宿る初めての感情。 「知らなかった」 「暁…」 「お前は初めて出来た、俺の聖域なんだ」  志月が強く首を横に振る。涙が溢れて飛んだ。 「違う…!俺はそんなんじゃない!だって俺は汚れてる!俺は…俺は人を…!」  暁が志月を抱きしめる。 「人を殺して…」  暁の腕の力が強くなる。このまま志月を自分の身体に取り込んでしまうのではないかと思う程に抱きしめる。そして暁も首を振った。 「そう言うことじゃないんだ志月。ごめんな…浅はかだった、俺」 「暁…?」  暁はゆっくり志月から身体を離すと、志月の細い肩を優しく掴んで座らせる。志月の涙が幾つも床に落ちた。  月明かりに塞ぐ自分の愛する人。落ちた涙も、俯く首筋も、顔にかかる色素の薄い髪も、全てが綺麗だと暁は思った。

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