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4th Crime 16

「…こっち側の奴らはさ、好きでここに居る訳じゃないんだ」  暁も志月の前に座って、志月の髪を撫でる。 「息したかったんだ、俺も」 「え?」  志月が顔を上げる。愛おしそうに自分を見つめる目がそこにあった。志月の胸が締め付けられる。狂おしい愛しさ。 「あっち側に少しでも触れられると思ったんだ…お前に触れれば…」  志月の頬を涙が伝って落ちる。その滴を暁が目で追う。 「もうここには来るな」  静かな声に、床で弾ける涙。 「や…やだっ…!」  志月が首を振る。暁のシャツを掴んで「嫌だ」と呟きながら首を振り続ける。 「母親にちゃんと話したか?」  志月の肩が震えた。目を大きく開けて聞き返す。 「え?」 「お前は見捨てられたわけじゃない。ちゃんと自分の思いを伝えたか?」  自分の、思い?  志月が暁を見つめたまま「分からないよ」と呟く。 「俺はさ、親に『いらない』って言われたからさ」 「そんな…」  暁が目を閉じて自嘲する。

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