66 / 85

4th Crime 33

「…暁」  そのどうしようもない寂寥の背中に、ルミは一瞬躊躇する。しかし部屋に残る甘い空気が、一晩中二人がしていた行為を顕にしていて、ルミの憎悪を掻き立てた。 「…あたし思い出したんだ」  いつもの甘ったるい声とはまったく違う、低いルミの声音。 「あのオヤジが殺された日、あたし志月に会ったんだ」 「………」  暁が何も言わず目線だけを真っ直ぐルミに向ける。 「志月が何か慌てて走って来てあたしにぶつかったんだ」  ルミがヒールを脱いで部屋に上がる。暁の側に立つとその姿を見下ろす。 「何となく気になって、隠れて後を追った。そしたら志月、あのオヤジに連れられて路地に入ってった」 「…それが志月だって確証あんのかよ」  煙草の煙が暁の口から漏れる。登ってきたそれがルミの鼻腔を苦くした。 「今思うと制服一緒だったもん!志月オヤジに目つけられたんだよきっと!」 「路地に入ってから後は見てないんだろ?」  暁がゆっくり立ち上がる。

ともだちにシェアしよう!