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4th Crime 33
「…暁」
そのどうしようもない寂寥の背中に、ルミは一瞬躊躇する。しかし部屋に残る甘い空気が、一晩中二人がしていた行為を顕にしていて、ルミの憎悪を掻き立てた。
「…あたし思い出したんだ」
いつもの甘ったるい声とはまったく違う、低いルミの声音。
「あのオヤジが殺された日、あたし志月に会ったんだ」
「………」
暁が何も言わず目線だけを真っ直ぐルミに向ける。
「志月が何か慌てて走って来てあたしにぶつかったんだ」
ルミがヒールを脱いで部屋に上がる。暁の側に立つとその姿を見下ろす。
「何となく気になって、隠れて後を追った。そしたら志月、あのオヤジに連れられて路地に入ってった」
「…それが志月だって確証あんのかよ」
煙草の煙が暁の口から漏れる。登ってきたそれがルミの鼻腔を苦くした。
「今思うと制服一緒だったもん!志月オヤジに目つけられたんだよきっと!」
「路地に入ってから後は見てないんだろ?」
暁がゆっくり立ち上がる。
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