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5th Crime 1

 始発に乗って家に着くと、玄関の前に母が立っているのを見つけた。志月が小さく「母さん」と呼ぶ。 「もう…帰って来ないのかと思ったじゃない…」  志月の腕を掴んで母が家の中に引っ張り入れる。 「何で母さんを悲しませるの?ねえ!」  いつかのように母が玄関に置いてある傘を手に取る。志月は振り下ろされたそれを受け止めるように握った。  驚いた顔をする母に、志月がしっかり目線を合わせる。 「俺勉強嫌いじゃないよ」  志月は傘を自分の方に引くと、母の手をそっと握って傘から離した。 「母さんのこと幸せにもしたい。俺が医者になることがそうだっていうんなら、そうしたいよ」  母の表情が困惑の色に変わっていく。それでも志月は母の目をじっと見ながら話す。 「でも俺は兄さんじゃない。俺は陽志兄さんじゃないんだ!」  ずっと心の中に渦巻いていたものを吐き出すように志月が叫んだ。堰を切ったように両目から涙が溢れる。 「俺は俺のペースで、俺のやり方で進んでいくから…!」  志月が傘を離す。音を立てて玄関の床に落ちた。 「もう、痛くしないで…」  志月が母の着ているカーディガンを緩く掴んだ。

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