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5th Crime 2

「俺は志月なんだ…」  殴られて痛むのは身体だけじゃない。  今までの傷は暁が消してくれたから、もうこれ以上傷つけないで。 「…シャワー浴びて学校に行きなさい。時間ないわよ」  母はそれだけ告げるとゆっくり志月から離れた。ガラスを踏んでいなかったことに志月が安堵した。 「…はい」  母の後ろ姿がとても小さく見える。志月はいく筋も流れては落ちる涙を拭いもせずに返事をした。  暁に愛されて初めて考えた。  母の心にも、歪んで形が違ってしまっただけで『愛情』というものがあったのだとしたら…?  シャワーを浴びて着替えると、もう出なければならない時間になった。志月はカバンを持って自室のある二階から降りるとリビングを覗いた。母がソファーに俯いたまま座っている。 「…行ってきます」 「志月」  声を掛けられて、志月が足を止める。母は立ち上がると、志月の方へ近付き制服のジャケットを渡す。 「ありがとう…」  小さく言った志月の顔をチラリと母が見る。そして、すっと右の掌を出した。 「え…?」  そこに小さな飴玉が一つ乗っていた。 「…明日からは…ちゃんと…お弁当を…」  そう言ってまた少し俯く。志月は泣きそうになるのを堪えて、笑顔でうなずいた。 「はい」

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