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5th Crime 3

 苦しかったのは叫ばなかったからだ。  どこかで諦めていたから。陽志兄さんの死に責任を感じていたから…。でも今は亡くなった兄の分まで一生懸命生きなければと思う。  そのためには…。  家を出ると、駅に向かいながら志月はどうしてももう一度だけ暁に会いたくなった。  もう一度だけ会って伝えたい。  俺ちゃんと母さんに言えたよって。  伝えるだけで…。  そして、もう一つ、これは暁には言えないけれど決めたことがある。  母に自分の気持ちを伝えられた、少しでも分かってもらえた今…ちゃんと自分と向き合って生きていかなければと思った今。  自首しよう。  あのホームレスの男性を殺したのは自分だ。その罪は消えるものじゃない。  暁が心から愛してくれたから、自分にはそういう存在が居てくれたんだという事実が、志月に力をくれた。決断できた。  最後の一目、今日が最後の一日。  今夜中に身の回りの整理をして、明日には警察に…。

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