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5th Crime 5

「違う…」  志月の震える足が暁の方へ動く。  違う、違う、違う、違う、違う!  もつれる足で暁の前に走り寄る。驚いた警官が慌てて志月の前に立ちはだかった。 「違う!違うんです!暁!」  志月が涙を溜めて叫ぶ。観衆がざわつく。 志月は自分の前に立つ警官を押し除けるように前に進もうとする。しかし屈強な警官が志月の肩を掴んで止めた。  暁は志月を見ようともしない。警官のスーツが掛けられている手首には、きっと手錠がはめられている。暁はそれを志月に見せたくないのか、背を向けるようにしてパトカーに乗り込もうとする。  志月が叫ぶ。 「指輪なんて同じものいっぱいあるのに!そんなの証拠にならない!」  志月は自分の制服のポケットを探る。 「ここにも同じ…」  そう言って志月が盗んだ指輪を出そうとした時、ずっと後ろを向いていた暁が突然振り返り、自分を捕らえていた警官を振り払って志月の前にやって来る。  暁が志月の頬を殴った。志月が滑るように地面に倒れ込む。

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