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5th Crime 7
叫ぶ暁を警官がパトカーに引っ張って行く。
「道空けて!」
道路側にも人だかりが出来始め、パトカーを隠しそうになっている。
「あか…つき…」
志月の唇が小さく動く。きっと暁には聞こえている、そう思うと志月の胸が張り裂けそうになる。
「暁!」
引き裂かれるような心の痛み。喉が切れるような声。愛しい人の名前を志月が叫ぶ。
一瞬、暁が顔を伏せたまま少しだけ振り向いた。
口元が笑った。
優しい笑み。
立つことも出来ない志月がその微笑みにただ涙を流す。右手に握られた指輪を手が鬱血するのかと思う程、強く握った。
同じものを選ぶなんて運命だと思っていた指輪。
今は呪いのように重く感じる。
暁を乗せた車が赤色灯を点灯させながら走り始める。人だかりを上手く避けながら、車両は大通りを真っ直ぐ走っていく。
「君、大丈夫か?」
警官の言葉は耳に入らない。ただ志月は遠ざかるサイレンだけを聞いていた。
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