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5th Crime 8
「大丈夫です、この子関係ないんで」
志月に問う警官を押し退けて、その腕を掴んだのはルミだった。
「何やってんのあんた、こっち来なさいよ!」
ルミの小さな体からは想像も出来ない力が志月の項垂れる身体を引っ張り上げる。
「立って、行くよ」
ルミがぐいぐいと志月の腕を引いて歩いて行く。混乱したまま何も考えられなくなっている志月を、ルミが駅の駐輪場の隅に誘導した。通勤通学時間を過ぎている今、あまり人通りがない。
止められない涙を拭うこともなく、茫然と立ち尽くしたままの志月の肩を掴み、ルミが自分の方を向かせる。暁に殴られて腫れている頬の上を、もう一度ルミが平手で叩いた。
「しっかりしなよ、あんた!」
ルミの目にも涙が溢れていた。志月の目に焦点が戻る。
「暁からの伝言、教えてあげる」
「え」
志月が目を見開いた。何か言おうとしたが声にならくて、唇が少し震えただけだった。そんな志月をルミはしばらく黙って見つめた。
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