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5th Crime 9
ルミが伝えようとしているのは暁が捕まる前に咄嗟に託した言葉だった。嫉妬に狂って志月を恨んでいるかもしれない自分に、それでも伝えた言葉。ルミにそれを告げるほど切羽詰まっていたし、何より暁が志月を、心から愛していたのだとルミは思い知らされたのだ。
「『ずっと半端に生きてきたけど、この想いだけは半端にしない』」
ルミの声に重なって聞こえる暁の声。
「あ…ああ…ああ!」
志月が膝をついた。立っていられないくらいの愛の告白。
ルミは声を上げて泣く志月を静かに見つめると、志月の前に自分もしゃがんだ。
「あたしは暁が好きだったから、暁にこんなに愛されてるあんたが好きじゃないけど…」
ルミが志月の肩を押して自分の方を向かせる。涙でグシャグシャの顔がそこにある。
「あのホームレスを殺したのは茂だよ」
「…え」
志月の目が大きく見開かれる。
「あの日、あんたが殴った時にはまだ生きてた。多分あんたと暁が逃げた後、茂が路地から出てきた」
「な………」
志月は驚きで声も出ない。
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