77 / 85
5th Crime 10
「いつも通りクスリでベロベロだったから、あたしはあいつの言葉なんか気に留めなかった…でもあいつ言ってた」
ルミが一呼吸置く。
「『オヤジに止めを刺してやった』…て」
志月が息を飲む。
「暁は…暁はそれ…」
擦れる声で志月がルミに問う。ルミの目から落ちた涙がコンクリートに幾つものシミを作る。
「あたしは志月のせいにしたかった…でも、暁が捕まる間際にちゃんと伝えた」
「じゃあ何で暁は…」
「茂をこの街から追い出したのは自分だし、それに…」
ルミが手の甲で涙を拭う。それでも溢れてきて何度も顔を擦った。
「自分は沢山悪いことしてきたから、精算して来るって…出来るだけ償うって」
志月、とルミが呼ぶ。
「未来にあんたと一緒にいたいからって」
ルミの言葉を聞いて、志月の目の奥で微笑む暁が見えた。
「うっ…うう…」
もう言葉にならなくて、志月は地面に伏せるようにして泣いた。
悲しみなんて優しい言葉ではない、慟哭。
「あ…かつきっ…あかつきっ…」
狂ったように愛する人の名前を呼び続ける。
ともだちにシェアしよう!