78 / 85
5th Crime 11
殺したのは自分ではない。でも、自分があのホームレスを殴った時、逃げずに医者に連れて行っていたら助かったかもしれない。そもそも指輪を盗まなければ…。
志月の頭の中で、もうどうしようもない事がぐるぐる回る。
どんなに小さなことでも、罪は許されることはないのかもしれない。
例えどんな形になっても罰は下るのだろう。
それも、自分に一番辛い形で。
「暁…」
これ以上ない、俺への罰。
「暁、暁、暁…っ」
暁が持って行った…俺の罪。
だから俺に下った一番の罰。
「志月」
ルミが立ち上がる気配を感じながらも、志月は顔を上げることが出来ない。
「暁の気持ち裏切ったら、許さないから!」
涙声が志月の頭上に降ると、気配が遠ざかって、足音が消えた。
志月が自分の身体を抱きしめるようにして体を起こした。暁に触れられた感触を思い出すようにそっと目を閉じる。
あんな風に生きてみたい。
あんな風には生きられない。
「あんな風に…生きるんだ」
暁のように。
暁のくれた優しさのように。
ともだちにシェアしよう!