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エピローグ 1

 恩師への挨拶が終わると、医学部の同級生からのエールを受けて、志月は手を振りながら大学を出た。  六年の大学生活が終わり、研修医として実務実習が始まる。志月は僻地医療に関わりたいと、過疎化の街の支援もしているような地方の病院での研修を強く希望した。ほとんどの同級生が大学付属や関連の病院に行く所を、一人地方へと旅立つ。 「寂しくなるわね…」  旅立ちの日の朝、母が言った。  志月の母と父は離婚した。母はカウンセリングを受けた時期もあったが、立場というものにすがって生きることを止めたことは大きな影響で、彼女は志月に辛く当たることもなくなった。  それでも志月は医学の道を選んだ。それについては、やはり母は誇らしげだった。 「わがまま言ってごめん。でも医療が必要な場所で頑張りたいから」  志月が大人びた顔で微笑む。いや、もう十分大人の年齢だ。 「年に何度かは帰って来てね」  言われて志月は微笑む。「うん」とは言わなかった。  ここまでは兄を奪ってしまったことへの償い。母の自慢の息子でいること。でも…。

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