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第4話 ホントの気持ちをさらけ出す
緊張して、部屋をウロウロ。
自分のセンシティブな部分を人にさらけ出すのはやっぱり恥ずかしい。
逃げ出したくても叶わない。
そうこうしているうちに、野中さんの服を着た彼が出てきた。
目の下まである長めの前髪をセンター分けしていて、かっちりとした印象から雰囲気が変わった。さっきよりも幼く見える。
そして黒色の何の変哲もない無地の上下が、ものすごく似合っていた。
「あ、あのっ、この度は大変申し訳ありませんでしたーっ!」
ずさーっとスライディング土下座をすると、彼も慌てて膝をついてきた。
「そんなのやめてください。俺の方こそ、勝手にあんなことをしちゃってすいません」
すいませんすいませんと互いに謝る。
そして彼がふと、思い出したように切り出した。
「あ、まずはシャワーを浴びて来てください。それから話がしたいです」
「そうですよね! 速攻で行ってきます!」
俺は秒でシャワーを浴びてから、野中さんの服に着替えた。
袖も裾も余りまくっているのを恨めしく思いながら2回折り返して着て、急いでリビングへ向かう。
彼はダイニングテーブルに着席して待っていた。
「野中さんが、これどうぞって。また片付けをしに下に戻っちゃいましたけど」
「そうですか。お2人にはとんだご迷惑を……」
向かいに座り、気を落ち着かせる為に出されたマグカップの中身をごくごく飲む。
それはネモレードのようだった。
思っていたより酸っぱくない。
「あの人とはどのくらい、お付き合いしてたんですか」
好奇心というよりは、心配しているような口調で訊かれたので、俺はホッとしながら、視線をカップのネモレードに向けてポツポツと語っていった。
「あの人とは半年くらいでした……あの、普通じゃないなって思いましたよね」
「あ、性別のこと? だったら別にそこまで驚いてないです。俺が意外だって思ったのは、あんなタイプの男の人と貴方が付き合ってたってことで。正直、釣り合っていないような印象を受けたので。あんな風に強引で自分勝手な男がタイプなんですか」
「そういう訳じゃないんですけど……あの人とはなんかこう、成り行きで付き合ったというか。そういうアプリで、なんとなく」
「はぁ」
目を丸くされたので、恥ずかしさのあまりに顔が熱くなってしまう。
「あっすいません!! ドン引きましたよね!!」
「引いてないです。俺も結構、成り行きで付き合っちゃうところがあるんで同じだなと思って」
「え、そうなんですか? 全然そんなふうには見えないですけど。えっとー……」
成瀬 です、と言われたので、こちらも川井ですと自己紹介した。
「それで成瀬さんも、成り行きで付き合った結果、今日振られちゃったんですか」
「そうですね。付き合っても、いつも上辺だけで、全然心を開いてないって相手に言われるんです」
「でも、人に弱味を見せるのって勇気がいるし、結構難しいですよね。俺も彼に心を開いてたかって言われると……」
ふと冷静に考えてみる。
果たして俺は、彼に心を開いてた瞬間なんてあっただろうか。
バイト先でミスして落ち込んでーとか、友達同士だったら慰め合うような状況を東さんは嫌った。
そんな辛気臭ぇ話すんなよ、気が滅入るわ、と言われてからは言葉を選ぶようになったし、気軽に相談も出来なかったのだ。
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