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第32話 十夜を思って1人エッチ*
カーテンを締め切った薄暗い部屋でベッドに横たわる。それだけで息が上がっていた。
キスを思い出すように唇を舐めて目を閉じれば、そこに十夜がいるような感覚になって身体中の肌が粟立った。背筋を寒気とは違うゾクゾク感が伝い、フルフルと体を震わせる。
Tシャツを上げ、ほんの少しひっかかるだけのふにふにとした2つの乳首を布の上からカリカリとこする度、ジンとした甘い疼きが足の中心へ向かっていく。
もし十夜だったら、どんな風に相手の体を触るのかな。
そんな妄想を勝手にしたらいけないのに、加速して止まらなかった。
見るからに引き締まっているあの胸と腕にきつく抱きしめられたら、さぞ気持ち良いだろう。
「──ん、ん……」
爪の先で乳首を引っ掻いていると、固く結んだ唇の奥から甘い声が漏れて恥ずかしくなってしまう。
ひとりHの時は、声を出すことなんてない。
それなのに今は声が我慢できないほど、官能でいっぱいだった。
とろりと濡れたのを感じたのは、瞳の奥だけではなくて。
さっきから先走りの蜜が止まらない。
かけていた薄い毛布を足で蹴りあげ、履いていたズボンと下着を一緒に濡れた先端を布にこすりつけながらずり下げると、上向いた性器がふるっと飛び出してきた。
「あっ……、っ……」
ドライでイッた余韻に、内ももを震わせる。
バターみたいに溶けそうだ。
濡れそぼっているそれを、手の平できゅうと握りこんだ。
その反動でまた、先端から蜜が零れて指を汚す。そのままゆっくり上下すると、くちゅくちゅと水っぼい音がしてきた。
膝を立て、気持ちの良いポイントを探っていく。
「ひゃ、ぁ、ぁん……っ」
とろみのある液体を纏った指先で先端を割って塗りつけると、びくびくと腰が跳ね上がるくらいに気持ちが良かった。
(十夜に触って、ほしいな)
こんなに誰かを思いながらひとりエッチしたり、感じたことは今までに無いかもしれない。
『優太さん、見かけによらずキス上手いね。もう1回してもいい?』
霞む頭のなかに、十夜の幻聴が落ちた。
見かけによらずとは失礼な。
ふと冷静にそう思うが、もしキスが上手くなかったら、俺ともっとキスがしたいとは思わなかっただろう。だから良しとすることにした。
胸の突起も、欲望のままに指の腹で転がしたり、押し潰したりをする。
本当は両方の乳首を同時に弄りたい。
だけどそうしたら、性器を弄れない。腕が3本あったらいいのに……。
ふと思い立った俺は、いったん下着の中に張り詰めた性器をどうにか仕舞い込み起き上がる。
内ももをひくつかせながら、頭を乗せていた枕にゆっくりとまたがった。
震える膝と腕で体を支え、少しずつ枕に体重をかけて下半身を沈みこませると、程よい弾力が尻や双球に伝わってきて、はしたなくも「あっ、あっ」と声を漏らした。
性器をぎゅっと押し付けるようにして腰を前後に動かすと、下半身全体に甘い疼きが伝わる。
ギシギシとベッドが音を立てて揺れた。
深く腰を動かして、両手で熟れた苺のように赤くなった乳首をつまみ上げるとジンとしてたまらなかった。
「あ……っ、んんっ」
俺がこんなことをしているだなんて、十夜は夢にも思わないだろう。
ほんの数回の擦り付けだけで、あっという間に欲望の淵へと引き込まれていく。
「──やっぁ……んん……っ……!」
最後は後孔の方も当たるようにめちゃくちゃに擦り上げながら達した。
欲望を解放している間も、打ち上げられた魚のようにビクビクと体が跳ねた。
枕にドサリと体を沈め、はぁはぁと荒い息遣いをしながら放心した。
跳ね返る息が熱くて苦しいけれど、あまりにも濃い快楽を得た俺はしばらく動けなかった。
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