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第33話 欲求解消と新たなストレス

   (あーあ。十夜のことを考えながらこんなことしちゃって、俺って超変態。十夜に悪いな……)  汚れたカバーや下着をじゃぶじゃぶと手洗いしながら、自己嫌悪。  終わったあとはこんな気持ちになると分かっているのに、みだらな行為は止められなかった。  さすが3大欲求のひとつ。  生きていく上で切り離せないものなんだよなぁ。  それから数日後、十夜から、はっちゃけたお誘いLINEが送られてきた。  今度、俺の髪をまたピンク色に染めてくれるらしい。  その後行きたいところがもしあれば、考えておいてとのこと。  どこ行こうかな、と悩んでいたある日の夜、バイトを終えて帰宅途中、知らない番号から着信があった。  普段は出ないのだけど、こんな時間に怪しい勧誘はこないよなぁと思い、軽率に電話に出てしまった。 『もっしもーし』  怪しい勧誘だったらどれだけマシだっただろう。  誰なのかが一瞬で分かり、頭の中が真っ白になった。 『優太ぁ、元気にしてるぅ?』  相手は間延びした声を出している。なんだか酔っているみたいだ。  耳をすませると、電話の向こう側から数名の騒ぎ声も聴こえてくる。  話したくない。  即切りたいけど、素直な感情を隠すのに慣れている自分は真逆の態度を取っていた。 「うんっ、元気だよー。久しぶりだね! どうしたの急に?」 『あぁ、別にこれと言って用はねぇんだけどさ。今学校の奴らと飲んでんだけど、高校ん時の俺たちの話したら、それマジでー?って話になって』 「俺たちの、話?」  バクバクと、動悸が激しくなって冷や汗が出てくる。  話したの?  俺があなたの部屋に行ってベッドに上がったこと。 『そうそう。そんな性癖の奴、リアルにいたんだぜーって教えてやったよ。そんな珍しいもんかね? あん時はお前のことヤバいと思ってたけど、今はジェンダー平等推奨派だよぉ、俺は』 「あはは、そうなんだ」  全く面白くないのに笑ってしまう。  胸の中は不快感でいっぱいなのに。 『優太、東京行ったらしいじゃん。どこ住んでんの?』 「…………」  『あれー、もしもーし、聞こえるー?』  思い切って電話を切り、そのまま電源を落とした。  駆け足でアパートへ帰り、布団の中に潜り込む。  (もう、ほっといてよ)  俺のこと、頭の中から消し去って、もう関わらないで。  あなたはあなたで人生を楽しんで。  こっちはこっちで楽しくやるから。  モヤモヤとした気分は抜けず、眠れそうになかったので、しばらくしてから外に出て、あてもなく街をさ迷った。  煮詰まった時とか、たまにこうすればスッキリとした気分になるのだ。  だがいつまでたってもモヤモヤは取れず、小雨の中、5時間。  モヤモヤを解消するどころか、ついでに体調不良を引き寄せてしまった。  熱が出て、ダルさは数日抜けず、十夜との予定をキャンセルする羽目になってしまったのだった……。

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