33 / 84
第33話 欲求解消と新たなストレス
(あーあ。十夜のことを考えながらこんなことしちゃって、俺って超変態。十夜に悪いな……)
汚れたカバーや下着をじゃぶじゃぶと手洗いしながら、自己嫌悪。
終わったあとはこんな気持ちになると分かっているのに、みだらな行為は止められなかった。
さすが3大欲求のひとつ。
生きていく上で切り離せないものなんだよなぁ。
それから数日後、十夜から、はっちゃけたお誘いLINEが送られてきた。
今度、俺の髪をまたピンク色に染めてくれるらしい。
その後行きたいところがもしあれば、考えておいてとのこと。
どこ行こうかな、と悩んでいたある日の夜、バイトを終えて帰宅途中、知らない番号から着信があった。
普段は出ないのだけど、こんな時間に怪しい勧誘はこないよなぁと思い、軽率に電話に出てしまった。
『もっしもーし』
怪しい勧誘だったらどれだけマシだっただろう。
誰なのかが一瞬で分かり、頭の中が真っ白になった。
『優太ぁ、元気にしてるぅ?』
相手は間延びした声を出している。なんだか酔っているみたいだ。
耳をすませると、電話の向こう側から数名の騒ぎ声も聴こえてくる。
話したくない。
即切りたいけど、素直な感情を隠すのに慣れている自分は真逆の態度を取っていた。
「うんっ、元気だよー。久しぶりだね! どうしたの急に?」
『あぁ、別にこれと言って用はねぇんだけどさ。今学校の奴らと飲んでんだけど、高校ん時の俺たちの話したら、それマジでー?って話になって』
「俺たちの、話?」
バクバクと、動悸が激しくなって冷や汗が出てくる。
話したの?
俺があなたの部屋に行ってベッドに上がったこと。
『そうそう。そんな性癖の奴、リアルにいたんだぜーって教えてやったよ。そんな珍しいもんかね? あん時はお前のことヤバいと思ってたけど、今はジェンダー平等推奨派だよぉ、俺は』
「あはは、そうなんだ」
全く面白くないのに笑ってしまう。
胸の中は不快感でいっぱいなのに。
『優太、東京行ったらしいじゃん。どこ住んでんの?』
「…………」
『あれー、もしもーし、聞こえるー?』
思い切って電話を切り、そのまま電源を落とした。
駆け足でアパートへ帰り、布団の中に潜り込む。
(もう、ほっといてよ)
俺のこと、頭の中から消し去って、もう関わらないで。
あなたはあなたで人生を楽しんで。
こっちはこっちで楽しくやるから。
モヤモヤとした気分は抜けず、眠れそうになかったので、しばらくしてから外に出て、あてもなく街をさ迷った。
煮詰まった時とか、たまにこうすればスッキリとした気分になるのだ。
だがいつまでたってもモヤモヤは取れず、小雨の中、5時間。
モヤモヤを解消するどころか、ついでに体調不良を引き寄せてしまった。
熱が出て、ダルさは数日抜けず、十夜との予定をキャンセルする羽目になってしまったのだった……。
ともだちにシェアしよう!