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第34話 最終的にはどうなるの? side十夜

   -side十夜- 「優太さんがスリにあったんだけど犯人に逃げられてムカついたんでキスしちゃいました」 「「どういう状況だよ」」  ケンと新に鋭くツッコミを入れられる。  優太置き去り作戦は上手くいったのかと問われ、初めは適当に誤魔化していたけれど、どうしてもあのキスが忘れられない俺はついに正直に話してしまった。  と言っても、かなり簡潔なので、2人は全く理解が追いついていなくて首を傾げている。  俺だって首を傾げるぜ。  どうして俺が優太さんにキスなんかしなくちゃならないんだ。  しかも思いのほか気持ち良すぎて、調子に乗って何度もさせてもらっちゃったし。  バカな優太さんは断りもせず、全部受け入れてくれやがるし。 「えっと十夜くん、それって結局、優太くんと付き合ったってこと?」 「いや、断じてそんなんじゃないから」  俺がピシャリと言うと、ケンはますますハテナマークでいっぱいになった。  もう少し分かりやすく、と落ち着きを払っている新に促され、俺は一から説明し直した。    そうだ、そもそも優太さんが悪い。  あの男から助けてやったのにあっちの肩を持つから、ぐわぁぁって嫌悪感が襲ってきて、すぐに人を信用する優太さんに制裁を与えるために、気付けば真正面からキスをしていた。  その後、優太さんは涙目になっていた。  あくびして誤魔化したつもりだろうけど俺には分かった。  ありゃ泣いてたな。  それでまた、イラついたのだ。そんなに俺とのキスは嫌なのかよと……。 「ていうか、1度はその人を放置したのにどうして戻ったんだよ」 「なんか雨も降りそうだったし、やっぱ可哀想かなって」 「お前はアレだな。好きな子を究極まで意地悪したいけど、実際に泣かれたら狼狽えるタイプ」 「あぁ?! そんなんじゃねぇ!」 「良かったな、本当の自分に気付けて」  昼休み、屋上のコンクリートの床に寝そべった新は、クスクスと笑いながら遠くに浮かぶ鱗雲を眺めている。  苦悶に表情をゆがめている俺は、新は全く分かっていないと思い、隣に腰を下ろしているケンに救いを求めた。 「十夜、キスだけで済んでなくない?」  だが欲しい言葉は1個ももらえず、頬を緩ませた顔でケンは訊ねてきた。 「はっ?!」 「泊まったんでしょ? だったらそれだけで終わるわけないじゃん」 「いいや終わったよ! しっかりと!」 「いいんだよ、俺たち親友じゃん。隠してても分かってるから。ねー」  ケンが同意を求めるように新を見れば、新も同じように表情を和らげたので「うぉー」となる。  本当なのに。  まぁ正直、あのまま流されていたら優太さんを襲っていたかも。  だがなんとか理性を押しとどめたのだ。  この人は彼女を作る予定なんだし、俺を好きになることはない。  実際『彼女できるといいね』と言われたし、あれが答えだ。優太さんは俺とのあんなキス、なんとも思っていない。  帰ってから我慢できずに即ヌいてしまったのには驚いた。  賢者タイムに相当頭を抱えたぜ。 「あの人とはキス以上のことは断じてしてない! 信じてくれ!」  そう言っても信じてもらえず、挙句の果てには「女にアレする時とはやっぱ違うの?」とケンに興味津々に尋ねられた。  このデリカシー無し男め。  成敗するため、ケンの頭頂部にチョップをお見舞いした。 「まぁもしまだセックスしてないって言うんだったら、今度会う時にそういう雰囲気に持っていけばいいよ。その人、簡単に流されてコロッと落ちるでしょ」  新はいい高校生のお手本みたいな顔をして、時々とんでもないことを言い出す。 「そんなことを俺がする訳ないし、さすがに流されないだろ。あの人案外、真面目なところあるし……」 「うんうん。十夜はきっと告白なんて大それた事できっこなさそうだから、先に体の関係を結んじゃえば話は早いよね!」  だめだ。ケンも聞いてない。俺が優太さんに手を出すと全く疑っていない。  俺はもう何も言えずに黙り込んだ。 「おーい十夜ぁ~、聞いてるー?」  ケンに耳元で声を出されるがシカトしてパンを頬張ると、ケンは愉快そうに肩を揺らして離れていった。 「結局さ、十夜はその人とどうなりたいの?」  新に訊かれて、ふと思考が停止する。  俺は結局、あの人とどうなりたいのだ?  良き親友になりたい……ってことでいいんだろうか。  いや、それ以外で何がある。それしかないだろ。  うんうんと自分に言い聞かせた。

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