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第39話 不法侵入はやめましょう
そんなことがあった数日後。
また俺に予想外なことが襲いかかった。
【ごめん。風邪引いたみたいだから、また今度にしてもらってもいい?】
優太さんと会う予定の前日の夜、彼からそんなメッセージが来たので、俺は自室のベッドに寝転がりながら返信した。
【いいよ】
【風邪大丈夫?】
【大丈夫。なかなか治らなくて】
【ごめんね(汗)】
なかなか治らない、のか。
ベッドの上で、赤い顔をしながら苦しそうに唸っている優太さんが頭に浮かんだ。
お大事に、と1度は打った文字を消し、代わりの言葉を打っていく。
【なんか欲しいもんとかある?】
【持ってくけど】
しばらく既読が付かなかったが、ちょうど暇していたところだし、俺は優太さんの家へ行く気満々でいた。
俺が体調不良になった時は、親や兄弟に思う存分甘えられるけど、優太さんは1人だから心細いだろう。
優太さんもきっと、俺に来て欲しいに決まってる。
どこから湧いてくるのか分からない自信を持ちながら支度している時、返信が来た。
【大丈夫!】
【また連絡するね】
ぽん、とありがとうのスタンプが押されてしまった。
予想では、『ありがとう~、十夜ってやっぱり気が利くね』って来るかと思ってたのに。
まぁいい。優太さんは優しいから、俺に遠慮しているのだろう。
月明かりの下。
電車に乗り、近くのドラッグストアで飲み物やゼリーを買ってから優太さんのアパートへやってきた。
インターホンを押そうとして指が止まる。
もし寝てたら悪いな。
けれど押さない限り、俺が部屋に入れない……。
ドアレバーに手をかけて引くと、すんなりと開いたので拍子抜けする。
鍵が掛かってない。
ちょうど良かった、と三和土に足を踏み入れた瞬間、すぐそこのキッチンの棚を開けている優男と目が合った。
頭がピンク色で、黒縁丸メガネをしているそいつは俺の顔をぽかんと見ている。
こいつ誰だ?!
目を見開いた俺はすぐに、優太さんから聞かされていた記憶と結びついた。
ピンク色の頭に黒縁丸メガネ。
こいつはきっと、優太さんが愛してやまないギタリストの匠志くんだ。
そいつは俺を見て、一言。
「えっとー……優太くんの、お兄さんですか?」
お兄さん、というワードに反応した俺は、カツカツと土足で部屋に上がって匠志の顔に自らの顔を寄せた。
「それってボクが老けて見えるってことですよねー? え? ちなみに何歳くらいに見えます?」
「え、あ、お兄さんじゃないんですか?」
「お友達ですよ」
ぷいっとそっぽを向いて、三和土にスニーカーを脱ぎ捨てた。
その間に匠志は奥へいき、優太さんに来訪者があることを知らせたようだった。
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