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第47話 なんかもう色々パニック2*

 はぁはぁと、荒い息遣いが唇から零れる。  熱い雫が尻の方まで滴ってきて、じわっと生暖かい感覚がした時、手の動きを早められた。と同時に、十夜の顔が近付いてきた。  唇がわずかに触れる既のところで顔をうつ向けると、またふふっと笑われた。 「キス、駄目?」 「……だめ……っ、風邪、うつる……っ」  それは本当なのだけど、他にも理由はあった。  これ以上すると、また好きという気持ちが溢れて止まらなくなってしまうからだ。  ここで拒まなければ、俺はいよいよこの人にのめり込む羽目になる。  この間十夜は、キスなんて減るもんじゃないと言った。  俺もその時はそうだと思ったが、今はそれを全力で否定したい。  減るもんじゃないかもしれないけど、増え続けるかもしれないのだ、この想いが。  十夜は納得したのか諦めたのか、キスをする代わりに手の動きを早めた。  追い上げが始まると、あっという間に快楽の淵へと追い込まれていき、変な声も止まらなくなった。 「あ──……あ、あ……っ、とう、や……っ」 「ん?」 「……もっ……俺……っ」  眉尻を下げて泣きながらかぶりを振れば、そっと後頭部を抱き寄せられ、肩口に額を押し付けられた。  その厚い胸板に抱きしめられたらさぞ気持ち良いだろうなぁと思っていたが、実際されてみたら予想の何十倍もの充溢感が全身を支配する。 「イっちゃえば」  クスッと耳元で囁かれた言葉は、やっぱり悪戯を仕掛けた子供のようで。  けれどその手は大きく、暖かく、俺を全部包み込んでくれていて。  十夜の体温と声は、すごく安心する。  よしよしと頭を撫でられて、片方の手で性器を扱かれて。  そんなに優しくされると、愛しさが込み上げて堪らなくなる。  俺はついに、しゃくり上げながらパタパタと熱いものを迸った。 「ん──……あ、ん……っ」  両唇をぎゅっと結んだまま、ビクンビクンと体を痙攣させたあと、しばらく放心した。  バクバクといっていた心音が正常になる頃には猛烈な恥ずかしさでいっぱいになり。  俺はもう1度すすり泣いた。 「うぅ……十夜に犯された」 「おい。人聞きの悪いこと言うな」 「だってぇ……」  わざとらしく両手で顔を覆って十夜に背を向ける。  全身びしょ濡れで気持ち悪い。  もともと汗もかいていたのでドロドロだ。 「拭いてあげようか?」 「いいですっ」  十夜はこんな俺とは裏腹に、随分と冷静な声音だった。  ちらりと顔を見ると、ひと仕事終えた後みたいな爽快感。こんなのどうってことないって顔してる……。  もう少し焦りとか、羞恥心とかはないの?  もしかして、普段から男友達には善意でこういうことをしてあげてるのかな?  微妙に変な空気感が漂う中で着替えをし、再度ベッドに横にされた。 「気持ち良かったでしょ?」  自信満々に言われ、面映い気分になる。  まぁ正直、他人の手による欲望の解放はとんでもなく気持ち良かったですが。 「あり、がと」  目元まで引き寄せたタオルケットの下で、こっそりお礼を言う。   それはちゃんと聞こえていたようで、俺の顔を覗き込んでくる十夜の頬はほんのり桃色で、慈愛に満ちた目をしていた。 「じゃあ俺、今度こそ本気で帰るわ。ちゃんと寝て、風邪治しなよ」 「うん。来てくれてありがとう」  十夜が帰った後も、俺はやっぱりずっと十夜のことを想っていて。  キスは1回しかしなかったけど、もう俺は、十夜にのめり込んだんだなと悟った。  いいや、キスをするずっと前から十夜に夢中だ。  だからこれ以上はヤバい。  というわけで、そろそろ本格的に彼女探しをしようと思う。    ベッドの中でゴロゴロと転がる。  ありえないことだけど、十夜も今この瞬間、俺のことを考えてくれていたら嬉しいなぁと思いながら、眠りについた。

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