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第50話 閑話 十夜の気付き①

 *十夜が優太に質問している時* side十夜 「えっ? もらったの?」 「CD買ったら渡された。俺は使わないから」  匠志から先ほどもらったブレスレットを優太さんに渡そうとするが、受け取ってはもらえなかった。 「これ、十夜が持っててよ。俺も今度買ったら貰えるから、そうしたらお揃いになるよ」  そのブレスレットを、手首に嵌められた。  俺はじっとそれを見つめる。  そうか……ペアって今まで煩わしいものだと思っていたけど、優太さんとだったらあり寄りのありだ。  むしろ嬉しい。これを見るたび、優太さんの笑顔と結びつく。 「俺と十夜の、友情記念ってことで」  はっきりと『友情』と言われ、心に鉛を入れられたみたいにズンとなる。  しかし、こんな程度で落ち込んでいては子供だ。   「……ん。分かった」  動揺を悟られぬよう、にっこりとしたが、思っていたよりも掠れ声が出てしまい焦った。  優太さんには気付かれていないといいが。 「そういえば優太さんって、誕生日いつ?」 「え、何いきなり。誕生日? 2月22日だけど」 「へぇ。ゾロ目じゃん」 「猫の日なんだよ。ニャンニャンニャン♪で」  鼻血を噴き出しそうになる。  顔の横に手を持ってきてグーを作り、それをフリフリと上下された俺の身にもなってくれ。  勘弁して。可愛すぎる。 「か、家族は? 何人兄弟?」 「えっと、両親と、6歳上のお兄ちゃんがいる」 「6歳上? 結構離れてんだね」 「うん。そういえば十夜と一緒だねー」  は? という顔を一瞬してしまい、慌てて「だね」と取り繕う。  危ない危ない。俺は27歳だった。 「兄ちゃんも、匠志くんみたいにバンドマンなんだよ」 「え? プロ?」 「目指してるけど、なかなか難しいんだって。働きながら時間見つけて遠征行ったり、CD出してる。そこの棚の一番下の右側は、兄ちゃんのバンドだよ」  そこの棚から1枚のCDアルバムを出し、ジャケットを見て驚いた。  かなりきわどい。  何がきわどいって、寝転がった外人の女性が写っているが、上半身裸で、全身にいちごジャムのような粘性のある液体が散っているからだ。  乳首はその液体でうまいこと隠れているが。  顔にも髪にも点々と付いた液体は、色が白濁だったらどう考えてもアレみたいに見える。 「結構、攻めてんね」 「あはは。毎回、写真はエッチな感じなんだよねー。曲調はブラックミュージックって感じのが多いけど、たまにシューゲイザーみたいなロック調のも歌ってたりする」 「あぁはいはいはい。アレね」  全然知らない単語が出てきたが知ったかぶりをかました。  とにかく、優太さんのバイト先がライブハウスな理由が腑に落ちた。その兄の影響が大きいのだろう。 「聴いてみたい? 良かったら貸すよ?」 「ん、借りる」  歴代の元カノたちは、自分の好きな物を俺にも勧めてきて、興味も無いのにやたらと押し付けてきた感があったけど。  好きな人と何かを共有し、驚きや喜びといった感情を分かち合いたかったのだろう。  今の俺には、その気持ちがよく分かった。  これからどんどん、知っていきたい。  優太さんがどんなのが好きなのか。 「あれ、さっきまで俺と匠志くんとの会話、全然興味無さそうに聞いてたのに」  優太さんは笑いながら首を傾げていた。  俺はもう1度、ジャケ写の外人の女性を見る。  これがもし、優太さんだったら…… (やばいやばい。妄想が止まらない)  俺は奥歯同士をぎゅっと噛み、またうっかりキスなんかしないようにしっかりと自制した。  その後、俺の手で優太さんをイかせることになるなんて、この時は全く予想していなかったんですけどね。  END*

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