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第53話 ケンに彼女ができました

「十夜がそこまで悩むなんてな……まぁ、本当のことを言うなら早いに越したことはないだろ。時間が経てば経つほど言いにくくなるからな」  口を拭いながら最もなことを言う新に、だよなと納得する。  野中さんだって、素直に謝れば優太さんは許してくれそうだと言っていたし。  よし。今度会った時にでも伝えてみようか。  初めは、好きになってもらってこっぴどく振るっていうのを目的に優太さんに近付いた訳だけど、それは口にしなければ決して分からないことだから。  告白してから年齢詐称を謝ろう。  いや逆だ。年齢詐称を謝ってからの告白か。 「セックスしてからの告白、からの謝罪じゃん?」  だから新は、いい高校生のお手本みたいな顔して馬鹿なことを言うんだよな。  まぁそういうところが好きで、俺も親友やってるんだけども。 「簡単にセックスなんかできるわけねぇだろうが。どんな変人だよ」 「オナニー手伝えてる奴が何言ってんだ」  屋上から出て階段を降りながら、俺はふと新に問う。 「そういや、ケンはどこで飯食ってんだ? あいつ、休み時間中も急にいなくなってたし」 「どうやら彼女ができたらしい。隣のクラスの子だって」 「は? 告られたん?」 「みたい。昨日の夜に初めて話したらしいけど、とりあえず付き合ってみるって」 「はは、よく知らない相手なのにとりあえずで付き合うのかよ! 信じらんねぇな」 「だから、つい最近までお前も来る者拒まずだったのを忘れたのか」  今までの俺の恋愛は悪いがクソみたいなもんだ。  告白してきた女子をどうにか傷付けずに断る煩わしさよりも、とりあえず受け入れて流される方が楽だと思っていたし。  今までの女子たちに、俺は心の中で謝罪をする。  気持ちが無いくせに適当に付き合って、適当に扱ってごめん。  今度の恋はもう、間違わないから許してくれ。  放課後、ケンも合流して3人でゲームセンターに行った。  ケンは彼女のことで頭がいっぱいらしく、目尻を下げてのろけていた。 「近いうちに2人にも紹介するねー。すげぇ可愛くていい子なんだよ? 今度、海に行く約束しちゃったー」  一応テスト期間中なのだが、俺たちは不真面目なので寄り道をする。  新とケンは銃を持って、画面に出てくるドロドロのゾンビをバンバン撃ちまくっている。 「海だぁ? お前、なに1人で青春謳歌しようとしてんだ」  許さん、と呟いた新は、建物から急に飛び出てきたゾンビの頭を撃ち抜いた。  ドババーッと鮮血が出て、ぎゃあああぁぁと不気味な断末魔が上がる。  ふ、と口だけを動かして笑ってゾンビを百発百中で倒していく新がちょっとサイコパスに見えなくもないが、俺は2人が楽しんでいる姿をおとなしく眺めた。  海か。  そういえば優太さんと何処へ行くかまだ決めていなかったことを思い出した。  具合も良くなったのか気になるので、LINEをしてみることにした。

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