61 / 84
第61話 結局着替える羽目になる
スカートのホックを止め、襟にリボンを通す。
最後に白のニーハイソックスを履いて完了。
脱衣所で着替え終えた俺は、鏡の中の自分を見て愕然とした。
(冷静に見るとすごくヤバいんですけど)
これは比喩ではなく完璧にヤバい。
数ヶ月前の俺を殴ってやりたい。
どうしてこんな格好を人前に晒そうと思ったのか。
東さんの「なんの冗談だよ」っていうセリフはあながち間違いではなかったのかもしれない。
今の自分なら分かる。なんの冗談だよこれ。
男がセーラー服着て、ついでに萌えアニメキャラみたいな白いニーハイソックス履いちゃって。
家に帰ってきてそうそう、こんなのがベッドに寝転がっているのを見たら恐怖だろう。
(どうして俺は! これでいけると思ってたんだ!)
羞恥のあまりに頭を抱えてうずくまる。
後悔先に立たずだけど、これほど過去をやり直したいと思ったことはない。
とにかくこれ、一旦脱ごう。
十夜には散々嫌だって言ったのになぜかしつこくて、「俺がいたから東はおとなしく帰ってたんだよね?」とか押し付けがましく言われて断れない雰囲気になってきて「ハイハイ分かった着替えるよー!」と勢いで部屋を出てきたのだけど。
しゃがみこんで涙ながらにリボンを外していると、脱衣所のドアの向こうから十夜の声がした。
「優太さん、着替え終わった? 開けていい?」
「えっ?! ダメだよ、ダメ!」
「じゃあ開けるねー」
ダメだこの人、話聞いてない!
鍵なんてついてないドアはすぐに開かれた。
十夜の目がすぐに俺の姿をとらえる。
「え……優太さん」
「ご、ごめん、すぐ脱ぐから……」
じっと見つめられると、いやでも顔に熱がいく。
スカートのホックを外そうとした手を掴まれた俺は、その場で立たされた。
「……可愛いじゃん」
「あ、あんま、見ないで」
「無理。だって可愛いもん」
こんな情けない格好を可愛いと言ってくれて、ほんの少しだけ救われた気持ちになる。だけど恥ずかしいことに変わりはない。
目を合わせられずにいたら、十夜は何を思ったか、俺の腕を引っ張ってリビングへ連れていき、ベッドに座らせた。
その拍子にスカートの裾がめくれて、太ももがあらわになってしまう。
普段はこんなに短いボトムスは履かないのでかなりスースーする。
裾を直していると、十夜の手がすかさず伸びてきて、ミニスカートとニーハイソックスの間の素肌を触れられた。
スルッと下から上へ撫でられ、意図せずピクッと肩が跳ねる。
「ここの絶対領域っていいよね」
「変な触り方しないでよっ……」
「下は普通のパンツ? 女子用のじゃないの?」
「下は普通だよっ」
スカートの中に手を入れられ、履いているトランクスをつまむと十夜は「あ、ほんとだ」と笑った。
なんだか体が火照っていく。
十夜が興味津々に俺の格好を凝視して、スカートやリボンを触ってくる。
好きだと言われたがっている自分が見透かされそうで怖くて、唇をかんで黙り込んだ。
ともだちにシェアしよう!