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第61話 結局着替える羽目になる

 スカートのホックを止め、襟にリボンを通す。  最後に白のニーハイソックスを履いて完了。  脱衣所で着替え終えた俺は、鏡の中の自分を見て愕然とした。  (冷静に見るとすごくヤバいんですけど)  これは比喩ではなく完璧にヤバい。  数ヶ月前の俺を殴ってやりたい。  どうしてこんな格好を人前に晒そうと思ったのか。  東さんの「なんの冗談だよ」っていうセリフはあながち間違いではなかったのかもしれない。  今の自分なら分かる。なんの冗談だよこれ。  男がセーラー服着て、ついでに萌えアニメキャラみたいな白いニーハイソックス履いちゃって。  家に帰ってきてそうそう、こんなのがベッドに寝転がっているのを見たら恐怖だろう。  (どうして俺は! これでいけると思ってたんだ!)  羞恥のあまりに頭を抱えてうずくまる。  後悔先に立たずだけど、これほど過去をやり直したいと思ったことはない。  とにかくこれ、一旦脱ごう。  十夜には散々嫌だって言ったのになぜかしつこくて、「俺がいたから東はおとなしく帰ってたんだよね?」とか押し付けがましく言われて断れない雰囲気になってきて「ハイハイ分かった着替えるよー!」と勢いで部屋を出てきたのだけど。  しゃがみこんで涙ながらにリボンを外していると、脱衣所のドアの向こうから十夜の声がした。 「優太さん、着替え終わった? 開けていい?」 「えっ?! ダメだよ、ダメ!」 「じゃあ開けるねー」  ダメだこの人、話聞いてない!  鍵なんてついてないドアはすぐに開かれた。  十夜の目がすぐに俺の姿をとらえる。 「え……優太さん」 「ご、ごめん、すぐ脱ぐから……」  じっと見つめられると、いやでも顔に熱がいく。  スカートのホックを外そうとした手を掴まれた俺は、その場で立たされた。 「……可愛いじゃん」 「あ、あんま、見ないで」 「無理。だって可愛いもん」  こんな情けない格好を可愛いと言ってくれて、ほんの少しだけ救われた気持ちになる。だけど恥ずかしいことに変わりはない。  目を合わせられずにいたら、十夜は何を思ったか、俺の腕を引っ張ってリビングへ連れていき、ベッドに座らせた。  その拍子にスカートの裾がめくれて、太ももがあらわになってしまう。  普段はこんなに短いボトムスは履かないのでかなりスースーする。  裾を直していると、十夜の手がすかさず伸びてきて、ミニスカートとニーハイソックスの間の素肌を触れられた。  スルッと下から上へ撫でられ、意図せずピクッと肩が跳ねる。 「ここの絶対領域っていいよね」 「変な触り方しないでよっ……」 「下は普通のパンツ? 女子用のじゃないの?」 「下は普通だよっ」  スカートの中に手を入れられ、履いているトランクスをつまむと十夜は「あ、ほんとだ」と笑った。  なんだか体が火照っていく。  十夜が興味津々に俺の格好を凝視して、スカートやリボンを触ってくる。  好きだと言われたがっている自分が見透かされそうで怖くて、唇をかんで黙り込んだ。

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