沈黙が落ちたあと、十夜が熱っぽく息を吐いたのが分かった。 　え、と顔を上げると、十夜が俺の髪を耳にかけた。 　十夜の細くてきれいな指先が、熱くなっている耳朶をかすめる。 「ほら、俺、全然引いてないだろ」 「へ？　あ、そうだね……」 　だからなんだというのだ。 　適当にからかわれて終わりだと思っていたのに、やけに真面目なトーンと表情なのが気になった。 　自分の胸の鼓動が早鐘を打っている。 　視線を外しても、十夜の熱い眼差しが痛いくらいに落ちてくる。 　なんとなくだけど、この間ここで俺が達したシーンを十夜も思い出しているんじゃないかと思った。 「優太さん。ちょっとここ、触って」 　手を掴まれて持っていかれたのは、十夜の胸の上だった。 　手のひらから伝わってくる感覚にハッとする。 　ドクドクと、俺と同じくらいのスピードで心臓がおおきく鼓動しているのが分かった。 「分かる？　この意味」 　フルフルと首を横に振る。 　十夜がなぜそんなに熱を孕んだ瞳をしているのか分からない。 　こんな、馬鹿みたいな格好をしている俺を見てドキドキしているっていうのか。まさか。 　困っている俺を見て十夜は笑みを浮かべた。 「まぁいいや。分からせてやるから」 　くるっと視界が回って、気付いた時には俺は天井を見上げていた。 　仰向けになった俺の顔の横に十夜が手をついて、見下ろしてくる。 「今日はキスしてもいい？」 　この間は風邪を引いていたし、十夜への好きだという想いが加速しそうだったから断ったけど。 　今日もダメだ、と拒否する前に、唇を塞がれた。 　ぬるりと熱く濡れた舌が潜り込んでくる。 　歯列をなぞられ、上顎をこすられるとあっという間に脳が溶け始めてしまう。 　やっぱり十夜とのキスは気持ちがいい。 　ずっとしていたくなる。 　キスはあの夜以来だけど、それよりも大分スムーズに出来るようになった気がした。 　自分に拒絶する気持ちが無くなってきたからだ。 　十夜が顔を傾ければより深く絡み合うように、俺も従順になり受け入れる。 「……ん、んっ」 　柔らかい口腔の感触に、息が漏れた。 　いつの間にか、やさしいキスとは程遠い、食べられてしまいそうな激しいキスに変わっていく。 　鼻呼吸だけではとても追いつかなくて溺れそうになった俺は、顔を捻って唇を離した。 　はぁっとおおきく息を吐いて目を開けると、十夜もわずかに呼吸を乱していた。 「気持ちい？　俺とのキス」 「……」 　そんなふうに聞かれても困る。 　気持ち良くなっていてはたぶんダメだし、悪いと言っても十夜を傷付ける。 　黙り込んだ俺を十夜はまた面白そうに笑って、改めて真上からセーラー服姿の俺を見下ろした。 「優太さん、マジでそこらへんの現役よりも可愛い女子高生に見えるよ。なんか、たまんなくなる」 　その言い方にほんの少し違和感を覚えた。 　胸の奥が、重くなっていく。 　言葉も声も出せない俺に気を良くしたように、十夜はスカートの中に手を入れて、下着のウエストゴムを掴んだ。 「これ、脱がしてもいい？」 　こちらが反応を示す前に、下着をずるっと下げられる。 　半分勃ちあがっていた中のものが縁にかかって、弾かれるようにふるっと飛び出たのが分かった。 　擦れた先端からじわっと疼きが広がって、俺は目を閉じてビクビクと体を震わせた。