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第80話 止まらない気持ち*
「俺もずっと、優太さんが、好きだった。マジで好きだから」
今日何度目かのキスを受け止める。
今度のキスは優しくなかった。
口を塞がれ、濡れた舌先が力を緩めた俺の唇を割って中に浸入してきた。
顔の角度を変えながら、歯列をなぞられ上顎をこすられ、息もままならないほどに奥深くまで潜り込んでくる舌先に翻弄される。
「ふ……ん、ん……っ」
逃げようと体を後ろに引くが、背後には高く積み上がった本がある。さっき崩してしまったこともあって、下手に動くことができなかった。
足の間がジンジンとして、痛いくらいだ。
もじもじと膝を擦り合わせていたら、十夜の手がその膨らみを服越しに撫でてきた。俺はぴくんっと肩を跳ねさせる。
「あっ、だめ……触ったら……」
「だめ。だって可愛すぎるもん、優太さん。ココこんなにしちゃって」
「だって十夜がエロいキスするから……っ」
十夜は意味深にニコッと笑って、俺のズボンのジッパーを下ろして手を入れてきた。
パンツ越しにその膨らみを手で掴まれて上下される。
もうとっくに天を向いていたその先端からは先走りの蜜が溢れていて、下着をたくさん濡らしていた。
「はぁ……っ、すごい、可愛い」
十夜は熱っぽく息を吐きながら、それに指を絡ませてくる。
窪みを爪先で蓋をするように強めに押されると、じわっと蜜が滲み出て下着を汚していく。
俺は机の縁を両手で掴んで、イヤイヤと首を横に振って嫌がっている振りをする。
本当は、そのスパークする瞬間を待ち望んでいる自分がいた。それを十夜に見透かされていそうで恥ずかしかった。
「ん、ん──……」
「気持ちいい? 優太さん」
手を上下しながら、俺の耳の後ろで低音で囁かれて肌が粟立つ。
カプッと耳たぶを優しく噛まれると、そこから甘い疼きが全身に広がって、一際高い声が出てしまった。
十夜に手淫をされるのは2回目だけど、はじめの時よりもたくさん感じていた。
十夜と心が繋がっていたことが分かって、体が素直に反応しているからかもしれない。
「やっ……あ……」
「……優太」
十夜はたまらないというような声音で、俺の名前を呼ぶ。
追い上げが始まるとじゅっじゅっと卑猥な音が大きくなっていき、ついに俺は太ももを震わせて達した。
ビクンビクンと何度も体を跳ねさせると机もガタガタと揺れ、積み上がっていた本も雪崩を起こす。
口の端から漏れた唾液を手で拭って息を整えながら、俺は涙目で十夜を見つめた。
「もう……っ、だ、ダメって言ったのに……」
「怒んなよ。まぁ、怒った顔も俺は好きだけど」
「そっ、そんな風にご機嫌取りしてもダメだからね……!」
十夜が今までにないほど甘くて、面映ゆい気持ちになる。
引き寄せられるように、自然と唇が重なった。
今度は触れるだけのキスで、すぐに離れていった十夜の顔はにこりとして慈愛に満ち溢れていた。
これから、この人とちゃんと一緒にいられるんだなと思うと、微笑むのを堪えられない。
目を細めてクスクスと笑う。
見つめ合って頬を緩ませ、もう1度キスをしようと顔を寄せあった時、向こうの階段から人が降りてくる足音が聞こえてきた。
「おーい十夜ぁ、締め作業終わったかー? さっきから物音してるけど、どうしたん……」
腰を片手で擦りながら現れた40代後半くらいの男性は、すぐそこで顔を寄せあっている俺たち2人の顔をキョトンと見つめる。
「「あ」」
「……あ?」
ほぼ同時に声を発した俺と十夜は、徐々に体をブルブルと震わせて顔を真っ赤にしていく男性を見つめた。
「なっ、なっ……何をやってんだぁぁぁお前らぁぁぁぁ!!!!」
後日、十夜はバイトをクビになった。
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