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第4話

そしてまた、水曜日の1限目。 前回と同じ席に座る後ろ姿を見つけ、隣に座る。 「首藤さん、おはようございます。」 「……あぁ、おはようございます。」 首藤さんが長めの単語を返してくれた……! 「挨拶返してくれたの初めてですね!」 「妹の先生なんで。」 「あっ……、なるほど。」 少し仲良くなれたかと勘違いしてしまった自分が恥ずかしい。 妹さんと話している時、首藤さんがとても優しい顔をしていたのを覚えている。 きっと妹さんの事をとても大切に思っているんだろう。 だから興味のなかった俺とも多少は会話をする気になってくれたのかな。 「春夏さん、真面目に取り組んでて覚えもいいし、素直で素敵な方ですよね。」 「……妹は昔からなんでも出来て、優しいし可愛いし本当にいい子です。俺とは大違い。」 「そうですか? 俺はおふたりは似てるなと思ってました。」 「天宮さんの感性は独特ですね。」 「……名前、覚えててくれたんですね。」 最初話した時に軽い自己紹介をしただけで、そこから名前を呼ばれるような会話をできることもなく、首藤さんから名前を呼ばれるのは初めてだった。 「まぁ。妹の先生なんで。」 さっきと同じセリフだ。 けれど、春夏さんの話ではあるけど、こうやって講義外で話すのは初めてで、名前覚えてくれてたのもそうだし、いろいろ嬉しいな。 「嬉しいです。」 「はぁ。」 何が嬉しいのかよく分からんという顔をされるけど、俺はその顔も気にならず、嬉しさから思わずニコニコしてしまう。 そんな俺を見て、首藤さんがひとこと。 「……変な人ですね。」 「え、俺ですか?」 「はい。」 「そんなの初めて言われました。」 「俺と話しててそんなに笑顔な人、珍しい。 あと、こんなに話しかけてくるのも。」 「あっ、すみません。迷惑でした?」 「いや、別に。」 「よかった。安心しました。 毎回話しかけていて今更ですが、迷惑じゃないかなって気になってたんです。」 「迷惑ではないです。」 「これからも話しかけていいですか?」 「ご自由にどうぞ。」 「やった。 ありがとうございます。」 首藤さんに自由に話しかけるのを許可された俺は、しっかり講義終わりにも話しかけた。 「今日もバイトですか?」 「はい。」 「頑張ってください。」 「……どうも。」 そして水曜日が来る度、俺は多少うざいと思われそうなくらいに、首藤さんに話しかけた。 春夏さんの話をする時は多少返してくれるものの、他の話題では相変わらずの返事しかなかった。 けれど、絶対興味のなさそうな話でもちゃんと聞いてくれるし、無言でも空気は穏やかで、首藤さんの隣は何となく居心地が良かった。 気づけば水曜日の一限の講義前は、首藤さんに俺の1週間の出来事を報告する場みたいになっていた。 もちろん遅刻する日もあったけど……。 それでも大幅に遅刻の回数が減ったと思うし、欠席することは今のところない。

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