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第5話
6月中旬。
前期の授業も3分の2ほど終わった。
取れる授業は全て取ったから単位が取れるか気がかりだったけれど、
大学1年の頃の必修科目だらけだった時に比べると、授業内容が面白いと感じられるものもあり、
更に水曜日は首藤さんのお陰(?)で早起き出来たため、テストやレポートに問題がなければ単位を落とすこともないだろう。
ただ、最近は気がかりなことがもうひとつ。
近頃、急に告白される回数が増えた。
たまたまかなと思っていたけれど、どうやら「天宮くんと橘さんがいい感じらしい」という噂が流れているらしい。
そして告白してくる人は、俺らが付き合う前に告白すれば自分にもワンチャンあるんじゃないか、と考えているらしい。
桐谷からそう聞いた。
“いい感じ”というのもどこからそう思われたのか不明だし、ほぼ話したことない人と“ワンチャン”はあるわけがないと思う。
「大変だな、天宮。今日ので何人目?」
「……わかんない。
誰があんな噂流したんだろ。それに俺がこんなに告白される理由もわかんないし、断るっていうのも結構体力使う。」
「愛想も良いし、顔も良いし、そりゃあ人も寄ってくるよ。」
「ほぼ話したことない人もいるよ?」
というか、8割は話したことない人だ。
「それはまぁ、顔だろ。ひと目惚れ的な。」
「それで言ったら桐谷もかっこいいけど。」
「俺は別に顔良くないよ。それに俺は彼女いるしな。」
「俺も彼女いる事にしたい。」
「……それはそれで大変そう。」
「俺も首藤さんみたいにクール路線でいけば人寄ってこないかな。」
「無理だろ。天宮って結構抜けてるし、反射で愛想良くしちゃうじゃん。」
「その通りです。」
「それに、塩対応って噂されるくらいには、首藤さんも声かけられたってことでしょ。」
「確かに。
あんなにも美形な人が同じ教室にいたら、みんなほっとかないよなぁ。」
「それに高身長だしスタイルもいい。
俺があの容姿で生まれてたら見た目で稼いでたと思うわ。」
「こういう話してると、俺が毎回隣に座ってるのが申し訳なく思えてくるな……。」
「いやいや、周りからすれば目の保養じゃん?
俺はさすがに並べなくてちょっと遠めに座ってる。」
「隣座ってもいいのに。」
「首藤さんと話したいかなと思って。」
「まぁ。」
「天宮がそこまで興味持ってる人って初めてじゃない?」
「うん。俺もなんでかわかんないけど、首藤さんの纏ってる空気が好きというか。
桐谷は俺の壁っていうかそういうものを、根性で破壊してきたけど、なんか首藤さんは隙間を縫ってするするって入ってくるんだよね。
正直言えば、桐谷が絡んできた最初のうちは不快だったけど、首藤さんは本当にそういうのが一切ない。初めて出会った、あんな人。」
「なんかもう運命だな。」
「ほんとそんな感じする。」
「昔の俺みたいに、天宮が首藤さんの壁的な何かを破壊出来ればいいな。」
「うん。
あ、え、でもということは、首藤さんは現在不快な思いをしている……?」
「……それは知らん。可能性はある。」
話しかけてもいいとは言われたけど、確かにあれが本心かは分からないな……。
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