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第14話

俺が1限の講義に早く着きすぎるというまさかの展開。 起きた時間は変わらないはずだけど、何故かいつもより早く支度できた。 「ねぇ天宮くん。 最近私たちの噂が流れてるの知ってる?」 席に着いて早々に、少し離れたところにいたはずの橘さんが隣に座った。 「あー、なんかそうみたいだね。」 そんなものに少しも興味がない俺は、講義の準備をしつつ、辺りを見渡す。 首藤さん、来てないな……。 「困るよね、そんなのじゃないのに。」 どう見ても困ってる顔をしていない。 なんなら少し嬉しそうだ。 俺はいろいろと困っているけれど。 「本当にね。迷惑してる。」 「そ、そうだよね。」 不意をつかれた顔。 ふと、見慣れた人影が近づいてきたのがわかった。 「あっ、首藤さん、おはようございます。」 「おはようございます。」 「土曜日はありがとうございました。」 「こちらこそ。」 幸いにも橘さんが座ったのはいつも首藤さんが座る方ではなかったため、いつもの席に首藤さんが座る。 橘さんとの会話は一旦終わったし、別にこれ以上話すこともないから、橘さんを気にせず首藤さんと話すけれど、それに耐えられなかったのか橘さんは話しかけてくる。 「最近仲良いね、天宮くんと首藤先輩。」 「仲良いってより、首藤さんが優しくていろいろ助けてくれるから、俺が懐いてるって言った方が近いかな。」 「そうなんだ。珍しいな、桐谷くん以外といるの。」 「まあね。 ほら、講義始まるから戻った方がいいよ。」 「……うん。」 「良かったんですか?」 橘さんの方を見て俺に尋ねる。 「はい。」 「あの方が噂の相手かと……。」 「えっ、知ってるんですか?」 「はい。たまたま耳にして。」 「噂は嘘です。いい感じの人なんていません。 話しかけられて話す程度で、俺が話したいと思って話すのは、桐谷と首藤さんくらいですし。」 「そうなんですか? 天宮さんモテるからてっきり……。」 「俺誰かを好きになった経験ないんですよね。彼女がいた事はあるけど、好きだと思ったことは1度も。 最低ですよね、好きでもないのに付き合うなんて。」 「いえ、そんなことは。 俺も誰かに恋愛感情を抱いたことはありません。 付き合ったことも1度もないです。」 「えっ、ほんとですか!? 家まで送ってくれたりとか、彼女を大切にしている想像が容易にできたので、勝手にいるもんだと思ってました。」 春夏さんは聞いたことないって言ってたけど、彼氏力(?)が高すぎて、さすがに居るだろうと勝手に思ってしまっていた。 「あれは天宮さんの危機管理能力が低めだから……。」 「すみません、気をつけます。」 「ぜひそうしてください。」

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