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第16話
【首藤廉 side】
土曜日の夜。
例に漏れず、こちらもまた春夏によって同じような会話が繰り広げられていた。
「お兄ちゃんお兄ちゃん!
今日、どうだった?」
普段はリビングで出迎えるのに、扉が開く音が聞こえたのか、玄関までやって来て靴を脱ぐ間もなく春夏に詰め寄られる。
「別に。」
「えー!先生すごくいい人だよね?優しいし、かっこいいし、勉強教えるの上手だし!」
「そうだな。天宮さんはいい人だよ。」
「先生とのお出かけ、楽しかった?」
楽しいと言うまで解放してくれそうにないな。
「まぁ……。」
「だよね!いつもより機嫌よさそうな顔してるもん。」
春夏の言う通り、これが楽しいという感情かはわからないけど、何かが満たされた感は確かにある。
他の人だと気まずくなったりすることばかりだけど、天宮さんとは無理に話さなくても居心地が悪くなることはないし、一緒にいて疲れるようなことはない。
「天宮さんの好み聞いといて。食べ物でも、行きたい場所でもなんでもいいから。」
「任せて!」
今回は完全に天宮さんに奢ってもらったし、無意識にも次は俺が払うとか言ってしまったから、また天宮さんと出かける機会があるといいと思う。
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