16 / 77

第16話

【首藤廉 side】 土曜日の夜。 例に漏れず、こちらもまた春夏によって同じような会話が繰り広げられていた。 「お兄ちゃんお兄ちゃん! 今日、どうだった?」 普段はリビングで出迎えるのに、扉が開く音が聞こえたのか、玄関までやって来て靴を脱ぐ間もなく春夏に詰め寄られる。 「別に。」 「えー!先生すごくいい人だよね?優しいし、かっこいいし、勉強教えるの上手だし!」 「そうだな。天宮さんはいい人だよ。」 「先生とのお出かけ、楽しかった?」 楽しいと言うまで解放してくれそうにないな。 「まぁ……。」 「だよね!いつもより機嫌よさそうな顔してるもん。」 春夏の言う通り、これが楽しいという感情かはわからないけど、何かが満たされた感は確かにある。 他の人だと気まずくなったりすることばかりだけど、天宮さんとは無理に話さなくても居心地が悪くなることはないし、一緒にいて疲れるようなことはない。 「天宮さんの好み聞いといて。食べ物でも、行きたい場所でもなんでもいいから。」 「任せて!」 今回は完全に天宮さんに奢ってもらったし、無意識にも次は俺が払うとか言ってしまったから、また天宮さんと出かける機会があるといいと思う。

ともだちにシェアしよう!