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第17話
あれからバイト先であの女の人を見かけることが無くなった。
家周辺でも見かけないし、天宮さんも特に何もないと言っていたし、もう天宮さんに関わるのをやめてくれていたらいいけど。
「おはようございます、首藤さん。」
「おはようございます。」
今は水曜日1限目。
今週で前期の講義は最後になる。
後期はもう取りたい講義もなく、単位も充分に足りているから、卒論くらいでしか学校に来ない予定だ。
「最後ですね、今日。」
「はい。」
「後期はもう学校には来ないんですか?」
「卒論があるのでたまに来ます。」
「じゃあなかなか会うこともないですよね……。」
「恐らくは。」
寂しそうな顔をする天宮さん。
天宮さんからすれば、俺なんて特段仲のいい関係でもないはずなのに。
「喫茶店の臨時休業を待つしかないですね……。」
「え?」
「そしたら春夏さんの家庭教師をしている日に会えるかなって。」
「あぁ、なるほど。」
普通に会う約束を取り付けるという選択肢は、天宮さんの中にはないんだろうか。
「あっ!俺が喫茶店に行けばいいですね!」
「あぁ。」
うん。ないんだろうな。
「……行ってもいいですか?
もし首藤さんが嫌とかであれば行かないので!」
「いいですよ。」
「ほんとですかっ?」
「はい。」
「やった!」
「あ、前のご飯のお礼にしては安いですが、コーヒー奢ります。」
「いいんですか?ありがとうございます。」
「どういうコーヒーがお好みなんですか?」
「そんなに詳しくないので、酸味が強くなければ。
前頂いたコーヒーは美味しかったです。」
「なるほど。天宮さんが来た時の参考にします。」
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