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第18話

【天宮きいち side】 夏休みに入って2週間。 春夏さんの家庭教師に行く日は、帰りに首藤さんのバイト先の喫茶店に行くのが定番になりつつある。 俺が夏休みの間だけ春夏さんの家庭教師が週1回から週2回に増えたため、水曜日と金曜日に行っているんだけど、さすがに頻度高すぎ……? けどコーヒーはもちろん、フード系もデザート系も全部美味しくて、ついつい足が向いてしまう。 「いらっしゃいませ。 こちらの席どうぞ。」 もう定位置になりつつある、カウンターの左端。 いつも首藤さんがそこに座るよう促してくれる。 「何にします?」 「首藤さんのオススメで。」 「お腹は?」 「結構空いてます。」 「わかりました。」 フード系はほぼ首藤さんが担っているようだった。 日によってメニューはまちまち。 優柔不断な俺は自分で選ぶことなくオススメを頼んでしまう。 「今日もモテモテですね。」 「あぁ……、まぁ。」 首藤さんはいつも髪をセットしていないけど、飲食店という都合上か、軽めのオールバックというか、前髪をあげたヘアスタイルをしている。 そんな事をしなくても美形なのはバレバレなのだが、余計に美形が際立つ。 しかもここの制服なのか、シャツにベストにスラックスという格好。 長身で程よく筋肉のついたイケメンがそんな格好で店頭にたっていてモテない方がおかしい。 ちらほら首藤さん目当てだろうと思われる客もいる。 「……あまり見られるとやりづらいです。」 「あっ、すみません。」 無意識にガン見していたようで、慌てて視線を外す。 かといってする事もないけど。 「ねぇ、隣座ってもいい?」 ぼーっとしていたところにふいに声をかけられた。 首藤さんと同じくらいの身長で、ニコニコしてて、オシャレで。コミュ力高そうな人だ……。 「……はい。どうぞ。」 「やった。ありがとう。」 「カウンターは空いてるんだから1個空けるとかしたらいいのに。」 「えー、だって廉のお友達でしょ?俺も仲良くなりたいじゃん。」 彼が座って早々、首藤さんが彼をみてそんなことを言っているのに驚いた。 今まで春夏さん以外と仲良さそうに話してる光景を見たことがなかったからだ。 「あんまりしつこくするなよ。」 「あれ、廉のお気に入り?」 「うるさい。注文は?」 「廉の容れたコーヒーで。」 「わかった。」 流れるようなふたりの会話をただ聞いていたと思ったら、首藤さんのお友達だと思われる人が笑顔でこっちを向く。

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