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第19話

「はじめまして。廉と高校一緒だった藤 奏汰(ふじ かなた)です。」 「……はじめまして。首藤さんと同じ大学の天宮きいちです。」 「きいちくんね。よろしく〜。」 下の名前で呼ぶんだ。 あまり呼ばれないからなんか新鮮。 「いきなり下の名前かよ……。」 首藤さんも同じようなこと思ってた。 「あ、嫌だった?」 「いえ、そんなことは。 全然呼ばれないから不思議な感じはしますけど。」 「そうなの?友達とかは?」 「名字で呼ばれてます。」 「え、みんな名字呼び?」 「みんな……っていうか、友達全然多くないので。」 「なるほど。確かに廉と気が合いそうだね。」 「おまたせしました。」 藤さんの言葉に若干被せるようにして、俺の前にコーヒーが置かれた。 「きいちくんはよくここ来るの?」 「まだしゃべんのかよ。」 「だってまだ名前の話しかしてないよ?これからじゃん?」 「ちょっとは静かにしろ。天宮さんにも迷惑。」 「はいはい、わかりました。 廉くんはきいちくんのこと気に入ってるんですね〜。」 首藤さんはその言葉を無視してコーヒーを容れ、無言のまま藤さんの前に出した。 「廉くんつめたぁーい。」 「うるさい。 すみません、天宮さん。こいつがうるさくて……。」 「いえいえ。 首藤さんの知らない一面を知れて嬉しいです。」 「なにそれ。きいちくんかわいい〜。」 「え、可愛い……ですか?」 「かわいい! 言った時の笑顔も含め、かわいすぎる!」 「……どのへんが?」 「自分の知らない人が来て、さっきまで自分が話してた人と話し始めたら、ちょっと気まずかったりするのに、むしろいつもと違う廉見れて嬉しいって……。 かわいいじゃん!?」 少しも、1ミリさえ理解できない説明。 「いい加減黙れ。 説明もよく分からんし、天宮さんも困ってるだろ。」 「あれ困らせちゃった?ごめんね。」 「そんな事ないですよ。」

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