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第20話

その日は結局、藤さんのコミュ力に負けて、結構話すことになった。 初対面でそんなに話すこともないし疲れたけれど、首藤さんの友達だから邪険にはできないし、首藤さんの新しい一面がちょくちょく見られるのは、それはそれで嬉しかった。 俺も首藤さんに対しては、今日の藤さんとまではいかないけど、よく話してたし、疲れさせたりしてたかもしれない。 「今日はありがとう。ごめんね、急にお邪魔して。」 「こちらこそありがとうございます。 楽しかったです。」 「それならよかった。 じゃあまた!」 「はい。」 先に店を出た藤さんを見送って、自分もそろそろ帰ろうかと立ち上がる。 「奏汰に付き合ってくれてありがとうございます。 今日は俺が奢るのでお会計は大丈夫です。」 「そんな、前にも奢って頂いたのに申し訳ないです。」 「気にしないで下さい。俺がそうしたいだけなので。 自分の友達と天宮さんが話してるの、なんか嬉しかったですし。」 「じゃあお言葉に甘えて……。ありがとうございます。 俺も楽しかったです。」 「ならよかった。 天宮さん、静かな方が好きそうだから。」 「まあそれはそうなんですけど、今日は楽しかったです。」 「よかったです。また来てください。」 「はい。また。」 それからも度々、藤さんは喫茶店に訪れては、きまって俺の隣に座った。 先に藤さんが来てる時は、わざわざ俺の席を空けてくれていて、そこに座るよう促された。 首藤さんとの会話が減ったのは残念だったけど、俺といる時には見られない首藤さんの姿が見られたり、首藤さんの高校時代の話を藤さんがしてくれたり、それはそれで楽しかった。 「奏汰は暇なの?」 「いやいや、忙しいよ? 今なんか、就活と卒論のせいでやること多くていっぱいいっぱいだし。」 「それにしてはよく来るね。」 「だってきいちくんのこと気に入っちゃったんだもん。廉と違って愛想よくて可愛いし、それに綺麗な顔してるしね。 ほら、俺ってイケメン好きじゃん?」 なぜかすごく褒められてる。 「知らん。」 あきれた顔で仕事に戻る首藤さんから俺に視線を移した藤さんは、何事も無かったかのように俺に質問をぶつける。 「きいちくんはさ、廉となにきっかけで仲良くなったの?」 「講義でたまたま首藤さんの隣に座った日、たまたまペアワークがあったんですけど、俺は遅刻してきたから何するかもわかんなくて。 でも首藤さんに聞いたら優しく教えてくれたし、首藤さん話聞くの上手いし、話も上手いし、俺が仲良くなりたくなって、毎回講義の度に隣に座って話しかけてました。」 「なるほど。納得した! 廉って根本良い奴だよなぁ。普段全然なせいで誤解しか生んでないけど。」 「うんうん。あまり好ましくない噂ばっかりだけど、本当は全然そんなことないんですよね。」 「ほんとそう。 ま、それも廉の個性だな。 よく喋る廉は仲良くなれた人だけの特権って感じするし、勘違いしてる奴は勝手に思ってろ〜って思ってるけど。」 「ふふ、そうですね。」

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