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第23話
「桐谷、いまのは……なんだったんだろう?」
「告白だと思うけど。」
「……うん、そうだよね。」
「にしてはまぁ、ちょっと曖昧ではあったけど。」
「……うん、そうだよね。」
「びっくりしたな。」
「……うん。思ってもみなかった。」
今まで告白される雰囲気でしかされたことないし、前もってある程度好意というものは感じている場合が多かった。
けど今回は全くそういうのもなかった。
首藤さん、俺のこと好きなんだ……。
いつからなんだろう。
「嬉しい?」
「んー……、わかんない。」
「でも天宮が告白されて悩むのは初だな。」
「うん。」
「応える必要はないって言われたし、ゆっくり考えてみたらいいんじゃない?」
「そうだね。そうする。」
「それにしても首藤さんすごいな。
大勢の人が聞いてる中で、なんの躊躇いもなくあっさりあんなこと言えるなんて。」
「あまりにもあっさりとした告白すぎて、危うく気づかないところだったもん。」
「俺も。3回くらい脳内で繰り返してやっと、今天宮告白されてる?ってなった。
カッコいいな。あれだけストレートに言えるのは。
それだけ好きってことだもんな。
まぁ、最後曖昧さを残していったけど。」
桐谷のその言葉を聞いて、首藤さんの告白を思い出してみて、まるで好きなのが当たり前とでもいうような感じだったなと思い、今更ながら照れる。
「うわ、顔赤っ。今更?」
「今更実感してきて……。」
「こんな天宮も新鮮でいいな。いつも好意に対して結構冷めてたし。」
「もう俺帰る!」
これ以上いつもと違う自分を晒すのが恥ずかしくなって、さっさと帰ることにした。
「はいはい、お疲れ。また明日。」
「また!」
首藤さんが俺のこと好き……。
微塵も想像していなかったことすぎて、まだ頭の中はぐちゃぐちゃだ。
最近少し口数が増えたとは思っていたけど、それでもまだよく喋るタイプではないし、思ってることが顔に出にくいタイプだし、全く気づかなかった。
あれ、でも今さっきって言ってたから、俺を好きになったのはついさっきの話なのか……?
「天宮くん。」
「……あぁ、橘さん。」
もう何を考えているのかすらよく分からない状態で、自転車置き場に向かう俺に、後ろから声をかけてきた。
「さっきの、首藤先輩の告白、聞いてたんだけど……。」
「あー、うん。」
「天宮くんも……その、好きなの?首藤先輩のこと。」
「んー、分かんない。まだ混乱してて。」
「そうだよね。男の人からの告白だし、それもあんなにも急だったし。」
なんだろう。なんかその言い方には違和感がある。
俺は首藤さんが“男”って部分には、少しも疑問を抱かなかったし、戸惑いもそこに関してはなかった。
それに橘さんの言い方からは、“男の人なんか”みたいなニュアンスを感じられて、若干不愉快。
「ごめん。ちょっと急いでるからまた。」
「あ、うん。ごめんね、引きとめちゃって。」
これ以上話しても不快にさせられるだけで時間の無駄のように思えて、早々に会話を切り上げた。
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