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第24話

首藤さんが俺の事を好きだと言う噂は、瞬く間に広がった。 好奇の目で見てくる人もいれば、首藤さんが誰かを好きになることに純粋に驚いている人もいたし、密かに想っていたのにと嘆いている人もいたり、反応は様々だった。 噂がどこで尾ひれをつけたのか、俺たちが付き合っていると思っている人もいた。 まあ誰がどう思っていようが構わないけど。 それよりも次どんな顔でどんな態度で首藤さんに会えばいいかわからない。 水曜日はもう明日に迫っていて、夏休みが終わったからって、家庭教師の後に喫茶店に寄らないのも不自然かな? 「次ここじゃなくない?移動しないの?」 ぼーっとしていて動かない俺に、桐谷が声をかけてきた。 「あぁ、うん。行く。」 「首藤さんのこと考えてた?」 「うん。どんな顔で次会えばいいかわかんなくて。」 「今まで通りでいいんじゃない?」 「そうなんだけど、あんなことがあった後に普通にできる気がしない。」 「そう?天宮そういうの得意じゃん。」 「それは別に、今まで告白してきた人たちには、何思われても気にしなかったし。」 「てことは、首藤さんにはなんて思われるか気になるんだ?」 「そりゃあ……。」 「へぇ?」 「何その言い方。」 「別にぃ?」 「あ、そうだ。桐谷も一緒に行こうよ。」 「どこに。」 「首藤さんがバイトしてる喫茶店。」 「は?なんで。」 「ひとりじゃ気まずいし。」 「まあいいけど。いつ?」 「明日。」 「2限の時間以降ならいいよ。」 「よし。じゃあ明日の14時半に喫茶店の前で。 あとで場所の詳細送るから絶対来てね?」 「わかった。 てか早く教室移動するぞ。」 「うん。」 桐谷が来てくれるとなれば、少しではあるけど、気が楽になった。 告白されるのってある程度慣れたと思っていたけど、今思い返せば、自分が良い関係を築きたいと思っている人から告白されることはなかったから、本当に未知の体験。 大学生にもなって告白されてこんなにワタワタしてる人間も珍しいのかな。 俺今まで恋愛事に興味が無さすぎて、そっち方面の知識が少しもない。 唯一知ってるのが穏便に振る方法……。

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