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第27話
ということで10月5日。
首藤さんが行きたいとこがあるっていうからどこかと思ったけど、まさかの新しく出来た水族館。
俺も来てみたいと思っていたところだったから嬉しくて、今日が来るのを結構楽しみにしていた。
「俺、水族館って好きなんです。
だから今日結構楽しみにして来たんですよ。」
「それならよかったです。
俺も天宮さんと出かけるの、楽しみにしてました。」
「……そうですか。」
水族館じゃなくて、そっちか。
首藤さんは本当に恥ずかしいことをなんでもないことのように言う。
俺は毎回慣れなくて照れてしまうというのに。
正直なのは最初からだったと思うけど、話してくれるようになったと思ったあたりから、それに拍車がかかったように思う。
「天宮さん、こっち。」
水槽を見ながら歩いていたから、人にぶつかりそうになったみたいで、首藤さんに軽く腕を引っ張られた。
「すみません、ありがとうございます。」
「いえ。」
これだから首藤さんに危なっかしいと思われるんだろう。
俺を気にしつつ歩いてくれている様子の首藤さんに今頃気づいて、申し訳なく思う。
「あの、ちゃんと周りみて歩くので、首藤さんも水族館楽しんでくださいね。」
「はい。」
といったそばから、足元の子どもにぶつかりそうになったところを避けようとして、バランスを崩す。
そこをすぐ後ろにいた首藤さんに支えてもらう。
「……すみません。言ったそばから……。」
「いえ。
手でも繋ぎます?」
俺の様子を見て軽く笑った首藤さんに、冗談ぽくそんなことを言われる。
「え、あ、手ですか?」
「ふっ、冗談ですよ。
俺は周りみながらでも水槽見れるので、天宮さんはしっかり水槽の方見てください。」
「あ、はい!」
ちょっと小馬鹿にされた気がしないでもないが、不快ではない。
むしろ、楽しそうな首藤さんを見れるのが珍しいからか、なんだかこっちまで笑顔になってしまう。
俺が熱心に水槽を眺めていたからか、首藤さんも特に話しかけてくることはなく、ほぼ無言で半分ほどまわった。
そろそろ少し休憩しようと、近くにあったベンチに並んで腰かける。
「天宮さんが楽しそうでよかったです。」
「すみません。ほとんど話してないし、全然デートっぽくないですね。」
「デートって認識してくれてたんですね。」
「……一応。藤さんも言ってたし……。」
「嬉しいです。」
「首藤さんもちゃんと楽しいですか?」
「はい。主に楽しそうな天宮さんを見ているのが楽しいです。」
「俺見ないで魚たちを見てください。
あ、もしかして俺が危なっかしいからですか……?」
「それもあるけど、ただ魚より天宮さんに興味あるだけです。」
「……もしかして俺を落とすゲームでもしてますか……?」
「いえ、全く。なんでですか?」
「なんでもないです。
よし、次行きましょう!」
「そうしましょうか。
あぁそういえば、もうすぐイルカショーが始まる時間ですね。」
「え!イルカショーですか?」
そんなのみたいに決まってる!
「見に行きますか?」
「行きます!行きたいです!行きましょう!」
首藤さんの提案に勢いよく乗って、イルカショーが見られるところまで早足で向かう。
イルカショーを見てる時の俺はもう、イルカのことしか頭になくて、首藤さんといることも忘れかけるくらいテンションが上がっていたと思う。
首藤さんにはまた恥ずかしいところを見られてしまった……。
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