28 / 77
第28話
「すみません、はしゃぎ過ぎてしまって。
首藤さんにも迷惑を……。」
イルカショーをみた後、気持ちが昂ったまま、まだ見てないエリアをひと通り見た。
前半と違って気持ちがふわふわしていて、いつも以上に周りを見てなかったようで、度々首藤さんに助けられた。
「いえ。イルカショーは初めて見ましたが、想像以上にすごくて俺もびっくりしました。だから気持ちが昂るのも分かります。」
「ですよね!すごかったですよね!
イルカさんたち可愛いし賢いし、最後の方なんて何故か泣けてきて……。」
「若干うるっときてましたよね。」
「よく見てますね。俺じゃなくてイルカを見る時間だったのに。」
「イルカも見てましたよ。俺も感動しました。
涙は出てきませんでしたが。」
「まあそうですよね。明らかに泣くところではないですもんね。」
「そうかもしれませんが、感性なんて個々で違うし、別にいいと思いますよ。
それに、表情をコロコロ変えてる天宮さんも可愛かったです。」
「……ありがとうございます。」
これもきっと照れたのが顔に出ちゃってるから、首藤さんにまたなんか思われてるんだろうな。
恥ずかしすぎるし、表情見られないようにお面でもつけたい……。
「夜ご飯どうしますか?食べたいものとか。」
そんな俺と違って冷静な首藤さんは、早速次の話題へうつる。
お腹は空いていたし、俺も気持ちを切りかえた。
「なんでもいいですよ。
首藤さんの食べたいものは?」
「焼肉行きませんか?」
「いいですね、焼肉。俺好きです。」
「よかった。じゃあ行きましょうか。
今日は俺の奢りなので、好きなだけ食べてください。」
「いやいや、誕生日の人に奢らせる訳には……!」
「気にしないでください。それに前回約束しましたし、奢らせて下さい。」
確かに、次回は俺がって言ってくれてたけど、そんなところまで覚えてくれてるんだ。
「よく覚えてますね。」
「そうですね。記憶力はいい方かもしれません。」
「今日ばかりは忘れてても良かったのに。」
「奢られるの嫌ですか?」
「嫌っていうか、申し訳ないです。
それに首藤さん誕生日だし……。」
「じゃあ次は天宮さんの誕生日に、天宮さんが奢ってください。」
「そういうことなら、任せてください。」
「はい、お願いします。」
俺がチョロすぎたのか、首藤さんはそう言って軽く笑った。
“次”とか“また”とか大抵は守られない発言な気がするけど、首藤さんならまた次があるような気がして、今日は大人しく奢られることにした。
「今日はよく笑ってくれますね。」
「そうですか?
だとすれば、天宮さんと居るのが楽しいからですね。」
「またそういうこと言う。」
「天宮さんは今日はよく照れますね。」
「……気づかれてました?」
「はい。」
「すみません、醜態を……。
あまりにも首藤さんが直球なもので。」
「いえ。可愛いなと思ってました。」
「あー、もう。はい。ありがとうございます。
さぁ!どこのお店に行きますか?俺はこの辺あんまり詳しくないんですが……。」
このままだとずっと醜態を晒してしまうと思って、慌てて話題を変える。
「それなら幾つか候補があるんですが、決められないので選んで貰ってもいいですか?」
「任せてください!」
ともだちにシェアしよう!

