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第30話

【天宮きいち side】 「今日はありがとうございました。」 「いやいや、こちらこそですよ。水族館もすごく楽しかったし、ご飯も奢ってもらって。 それにここまで送ってもらったことも。 いつもすみません。俺がもっとしっかりしてれば…。」 俺はまた首藤さんに家の前まで送ってもらった。 最初はちゃんと遠慮したんだけど、全く聞き入れて貰えなくて、その先に言われることはもう分かってるから、今回は大人しく言うことを聞いた。 「いえ。今日に関しては、ここまで送った理由の9割が、天宮さんと少しでも長く居るためなので。 むしろ俺の方こそ、送られてくれてありがとうございます。」 「そっちだったか……。」 「はい。そっちでした。」 俺に気を使わせないための嘘か、本当に思っているのかは分からないけど、素直に照れる。 今日は本当にこの人の発言に困らされてばかりだ。 「もう暗いし、首藤さんも気をつけて帰ってくださいね。」 「はい、ありがとうございます。」 「じゃあまた。」 「はい、おやすみなさい。」 そう言ったあとも俺が部屋に入るまで帰ろうとしないから、軽く会釈して先に家に入る。 いっぱい歩いたし疲れたけど、ここ最近で1番楽しかった。 完全に俺のペースで水族館を楽しませてくれて、けどひとりではない楽しさもちゃんとあった。 今すごく満たされた気分だから、このまま風呂入ってさっさと寝ちゃおう。

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