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第37話
首藤さんとふたりで、喫茶店まで戻ってきた。
「あら、天宮くん。久しぶり。
いつも息子と娘に良くしてくれてありがとうね。」
「いえ。こちらこそお世話になってます。
それとコーヒー、ご馳走様でした。」
さっきあのコーヒーは首藤さんのお母さんにいれていたものだと聞いた。
「どういたしまして。
で、うちの廉どう?見た目はそんなに悪くないと思うんだけど。」
いきなり来た……。
道中で首藤さんが、母さんは興味があることはなんでも聞いてくるって言ってたから、多少は覚悟していたけど。
「母さん。そんなこと聞かれても天宮さん困るから。」
「えー、ダメ?」
「廉さんのことは素敵な人だなと思ってます。」
「ほんと?
天宮くんって今恋人いたりする?」
「恋人は……」
チラッと首藤さんの方を見る。
首藤さんの家のことだし、俺が勝手に言うのは違うよね。
「母さん。」
「はいはい。もう聞きませんよ。
あーあ。天宮くんいい子だし、廉がダメでも春夏とかどう?」
「ダメ。」
「廉に聞いてない。天宮くんに聞いてるの。」
今度は首藤さんがチラッと見てくる。
俺たちのことを言ってもいい?ってことかな、と思って、軽く頷く。
「天宮さんはもう俺の恋人だから。」
「えっ、えっ!?嘘、いつの間に!?」
「ついさっき。」
「え、なんでなんで?どうやって?」
「それ以上は教えられません。
息子の恋愛事情に首突っ込まないで。」
「春夏に連絡しないと。今日はパーティーしよう!天宮くんも来ない?
あ、でもふたりきりで過ごしたいか?母さん春夏とふたりでご飯してこようか。」
展開が早すぎるし、理解がありすぎる。
「一旦落ち着いて。それに天宮さんは天宮さんの都合があるから。」
「天宮くん今日なにかご予定は?」
「今日はなんの予定もないです。」
「じゃあちょうど良かった!
よかったらうちに来ない?ふたりきりが良ければ、私たち途中で席外すし。」
「いいんですか?」
「もちろん!
じゃあ私先帰るから、天宮くんと廉はゆっくりしてきて。」
「ありがとうございます。」
首藤さん母はあっという間に去っていった。
「春夏さんは見た目も中身もお母さん似ですね。」
「すみません、賑やかで。」
「いえ、嬉しいです。
あんなに歓迎されること、なかなかないので。
素敵なお母さんですね。」
「はい。とてもいい母だと思います。
けど、ふたりきりのチャンスを逃したのは残念です。」
「これからいくらでもあると思うので、大丈夫ですよ。」
「いくらでもか。確かにそうですね。」
意味深な言い方をしたような気もするけど気のせいだろうか。
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