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第47話

「すみません。デートなのでそろそろいいですか?」 「そうだね、ごめん。お邪魔しました〜。」 俺の気持ちがバレたのか、あっさり話を切り上げた首藤さんに、特に気にする様子もなく笑顔で手を振って去っていくはるな先輩。 藤さん同様、一周まわって塩対応な感じが、ふたりの仲の良さを感じさせる。 「仲良いんですね。」 「似たような卒論のテーマだったので、よく相談乗ってもらってただけですよ。 それよりすみません。せっかくのデートなのに。」 「いえ、全然。 さっきはすぐ恋人って言ってくれて嬉しかったので、問題ないです。」 「俺も自分で言ってて嬉しかったです。 天宮さんが俺の恋人なんだと思って。」 そう言って俺の方を見てニコッと笑う。 不意の笑顔にドキッとさせられて、それを誤魔化すように早足で歩き出す。 手を繋いだままだったから、引っ張られるようにして首藤さんもついてくる。 「怒ってます?」 「怒ってませんよ。」 「じゃあこっち見てください。」 「今は嫌です。」 絶対表情筋緩んでるし、顔赤い気もするし、恥ずかしいからこんな顔晒せない。 「なぜですか?」 「嫌だからです。」 「どうしたら嫌じゃなくなりますか?」 「5分経てば多分嫌じゃなくなります。」 「5分か。長いですね。」 「すぐですよ。」 「……きいち。」 急に黙ったと思えば、唐突に下の名前で呼ばれて、思わず首藤さんの方を向いてしまう。 「あっ……。」 笑顔の首藤さんをみて、首藤さんの策にまんまと引っかかってしまったと気づく。 「よかった。本当に怒ってないみたいですね。」 「……怒ってないですよ。 首藤さん、俺の名前覚えてたんですね。」 「当たり前です。好きな人の名前を知らない人はいないですよ。」 「そうですね。」 「あ、知ってますか?俺の名前。」 「もちろん。首藤廉、ですよね。」 「はい。 嬉しいです。知っててくれて。」 「好きな人の名前を知らない人はいないと思います。」 「ふふ、そうですね。」 その日はその後、別にどこに行くでもなく、ただそのへんをふたりで歩いて、疲れたら近くの公園のベンチを借りて休んだ。 それだけのことなのに首藤さんと一緒だと退屈に感じなくて、ずっとこの時間が続けばいいなーなんて思ったりもした。

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