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第48話
ある日の学校。
首藤さんが学校に来る日らしく、一緒にご飯を食べようと食堂で会う予定をしていた。
けど俺が食堂についた頃には、首藤さんの周りには人だかりができていた。
なんでかは知らないけど、1限から2コマ講義を受けた俺には、そこに入っていく元気もないから、一旦様子見。
にしてもやっぱりカッコいいな。
みんなが声をかける理由はしらないが、声をかけたくなるのもよくわかる。
少し離れた席で首藤さんの横顔を眺めていると、ふとこちらを向いた首藤さんと目が合う。
こっちに歩いてきた。
「なんで声掛けてくれなかったんですか。」
「人が集まってたから、何か話してるのかな〜って。」
「あぁ、天宮さんのことを話してました。」
「え?それはどういう……?」
「あんなふうに告白したのもあって、俺が天宮さんのことを好きなのはみんな知ってるらしく、近況を聞かれたので天宮さんの好きなところを話してました。」
「なんてことを……。」
「ダメでした?」
「ダメではないですが……。」
今も至る所から視線を感じると思っていたけれど、そのせいでもあるってことかな。
「すみません。
つい自慢したくなってしまって。以後気をつけます。」
「ちょっとならいいですけど……。」
「はい、では次はちょっとにしておきますね。」
そう言って首藤さんが微笑めば、俺たちを見ていたであろう人たちがザワつく。
学校では滅多に微笑んだりしないからだろう。
「最近、首藤さんの塩加減が軽減して、話しかけやすいって言われてましたよ。」
「そうなんですか?」
「そうみたいです。
さっきそのへんの人達がそう話してるのが聞こえました。」
「確かに最近は、前よりも話しかけられる回数が増えたような気も。」
さっきの微笑みで話しかけたい人が余計増えただろう。
みんなが首藤さんの良さを知っていくのは嬉しいけど、独り占めしたい欲もある。
「さっきも珍しく楽しそうに話してましたもんね。」
「天宮さんの事になると、つい表情筋が緩んでしまうようで……。」
そんなふうに言われると、どうもできない。
ただ嬉しい。
「あ、そういえば言っておくことがあるんです。」
「はい。なんでしょう?」
「思ったより卒論に手間取ってしまって。
前よりも学校には来るので会えるとは思うのですが、プライベートの時間を確保するのはしばし難しいかと。」
「そうなんですね。」
「来月末には提出なので、長くて2ヶ月弱だとは思いますが、すみません。」
「いえ!頑張ってください。」
「ありがとうございます。頑張ります。」
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