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第51話

インターフォンの音で目が覚める。 百合ちゃんが出てくれたらしい。誰だろう……。 「きいち、首藤さんって人が来たけど。」 えっ、首藤さん!? なんでだろう。 あ、今日学校行ってないからか。最近いつもお昼は一緒だったし。 「俺出る。」 「はいはい。」 ふらふらの足取りで、百合ちゃんに見守られながら玄関まで歩く。 「天宮さん大丈夫ですか? 連絡もなく来なかったから心配で……。」 「すみません。」 「俺こそ風邪をひいてるとは知らずに、わざわざ出てきてもらってすみません。」 「あの、移すと悪いので……。」 「きいち。そんなこと言わずに入れてあげたら? 冬なのに汗かくくらい走ってきたみたいだし、せめて水かお茶くらい。 はい、首藤さんこれマスク。」 「あ、どうも。」 「一旦入ってください。 んできいちはもっかい横になって。」 「うん。」 俺も首藤さんも百合ちゃんに言われるまま、俺は横になって、首藤さんは俺と百合ちゃんと、少し離れ気味に座った。 「あ、そうだ。勘違いしないでくださいね。 きいちの姉です。 百合ちゃんって呼ばれてるからよく勘違いされるけど、血が繋がってないだけで、私には婚約者もいるし。」 「……お姉さんでしたか。」 首藤さんの周りの張りつめていた空気が、少し和んだ気がする。 「ねぇ。違ったらごめんだけど、きいちの好きな人?」 俺だけに聞こえるように小さい声で聞いてくる。 俺はそれに頷いた。 「だと思った。」 どこで気づいたのかは不明だが、そもそも家に来るような友達がいないというのも知られているので、気づかれるのも時間の問題だとは思う。 「あの、というか、彼氏……。」 「えっ!? ……あ、ごめん。大きな声出して。」 「大丈夫。」 「きいちのどこが好きなんですか!?」 急に首藤さんに興味津々になった様子の百合ちゃん。 首藤さんは話す内容が明確だと問題なく話せるようだけど、これに関しては黙ってて欲しい。 熱が上がる自信がある。 ……でもちょっと聞きたい。 「全部含めて好きなので、ここ、って明確なところはないんですが……。」 「しいていえば?」 「天宮さんが天宮さんとして存在してるところ……?」 「なにそれベタ惚れじゃん。 てか私も天宮だし、きいちって呼びなよ。」 「あ、はい……。」 首藤さん、百合ちゃんの圧に負けてる。 「それでどっちから告白したの?」 「僕です。」 一人称僕の首藤さん。珍しい。 「なんて?」 「え、っと……。」 好きです付き合ってください、みたいなのはなかったしなぁ。 「何人かいた中のひとりに、僕があま……きいちさんのこと好きなんじゃないか、ってきいちさんの前できかれたので、俺は好きです、っていう感じで。」 ほんとに下の名前で呼んでくれるんだ。 恥ずかしいような、嬉しいような。 「うわかっこよ。みんなの前で公言してくれるのいいなー。 で、きいちはなんて?」 「特に返事は求めてなかったので、なんとも。」 「え、じゃあどうやって付き合ったの。」 「きいちさんから好きか聞かれたので、好きですって答えたら、俺も、って。」 「ずるいな、きいちは。照れ屋にも程があるね。 まあそこも可愛いな。」 「はい。可愛いです。」 弟バカと恋人バカの会話。 自分の好きな人たちがこうやって話してるの、なんか不思議な感じするけどすごく嬉しいな。

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