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第52話

ふたりの会話を聞いてるうちにまた寝ていたようで、起きたら外は真っ暗だった。 薬のおかげか、さっきよりも頭が軽くなって、視界が不安定だったのもなくなった気がする。 「お、起きた。 私そろそろ帰るけど、大丈夫? てかその方が都合いいよね、きっと。」 百合ちゃんはニヤニヤしながら言ってくる。 そんなにやけ顔は無視して頷く。 「大丈夫。来てくれてありがとう。」 「なんかあったらまたいつでも呼んで。 まあ今後は頻度減りそうだけどね〜。」 まだ居てくれる首藤さんを見て終始ニヤニヤしながら帰っていった。 「首藤さんもすみません。忙しい時期なのに。」 「気にしないでください。天宮さんより優先すべきものなんてないですから。」 「ありがとうございます。」 「……あの、泊まっていってもいいですか?」 「えっ?」 「まだ熱下がりきってないようですし、心配で。 あ、いやらしい事とか考えてませんからね。絶対何もしないので安心してください。」 「ふふ、別に疑ってないですよ。 じゃあお言葉に甘えて、お願いします。」 「はい。」 「布団は百合ちゃんがたまに来るので、そこのクローゼットにあるはずです。」 本当はベッドを貸し出したいけど、さすがに風邪ひいた人が寝てたところは嫌だろうし……。 申し訳ないな。 「仲良いんですね、お姉さんと。」 「百合ちゃんが昔からよく可愛がってくれたから、俺も気づいたら懐いちゃってたんです。 俺、前の母親の連れ子だったから父親とも血繋がってなくて、そのせいでお互い遠慮がちで……。 けど百合ちゃんはグイグイ来てくれるから、俺も遠慮しなくていいんだ、って思えたんです。 だから血は繋がってないけど、一番家族らしいというか……。あ、でも両親とも仲はいいんですよ。」 「そうだったんですね。」 「全然重い話とかじゃないので! そうだ。首藤さんお風呂入ります?」 重い空気になりそうなのが嫌で、話題を逸らすと共に立ち上がったけど、立ちくらみがしてバランスを崩す。 そんな俺を首藤さんはすかさず支えて、ベッドに座らせてくれる。 「おっ……と。大丈夫ですか? 風呂はタオルさえお借り出来れば大丈夫なので、寝ててください。」 「ありがとうございます。 タオルなら、洗濯機の中に洗ったやつが入ってます。着替えも同じく洗濯機の中にスウェットがあると思うので、よければそれを……。」 「わかりました。ありがとうございます。」 脱衣場に消えていく首藤さんを横目に、また横になる。 熱ある時って無限に眠れるのなんでだろう。 結構寝たはずなのに、まだ眠い。 少しだけ寝てもいいかな……。

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