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第53話

「ん……?首藤さん?」 目が覚めたら、既にお風呂から上がった首藤さんが、洗濯機の中に入れたままだったであろう服たちを畳んで収納してくれていた。 来る度に片付けさせている気がするけど、恋人にそんな事させていいのだろうか……。 「起きました? 何か食べられそうですか?」 そんなことは本当に気にもとめてないように、俺のお腹の心配をしてくれる。 「はい。少しお腹がすいたような。」 多少頭の痛みや体のだるさはあるけど、さっきより声も出るし、気持ち悪さもない。 「何がいいですか? お粥かうどんか、それともゼリーや果物にします? お姉さんがいっぱい買ってきてくれたみたいで、なんでも選べますよ。」 「うどんがいいです。 割ってない卵が入ってるやつ。できればとろとろの半熟。」 「わかりました。任せてください。」 ちょっとめんどくさそうな要望をしたのに、笑顔で引き受けてくれる。 この人は本当に優しい。 怒ったところを見た事も、嫌そうな顔をされた事すらない。 「首藤さんはお腹すいてないですか? 冷蔵庫にあるもの食べてもいいし、それか外で何か食べてきたり買ってきても大丈夫ですよ?」 「じゃあ一緒にうどんを頂いてもいいですか?」 「もちろん!」 「ありがとうございます。」 「お礼を言うのはこっちの方ですよ。 さっきの洗濯物とか、ご飯とか。というか来てくれたこと自体が本当に嬉しいです。ありがとうございます。」 「片付けたいからしただけだし、ご飯も作りたいから作ってるんです。 それに俺が会いたいから来ただけですよ。 だからお礼を言われることは何も。」 「えぇ。んー、じゃあ、……俺の彼氏になってくれてありがとうございます。」 「それこそお礼を言うのはこっちの方です。 あ、そういえば、お姉さんに言ってよかったんですか?」 「はい。それにあの時は、百合ちゃんから聞いてきたんですよ。きいちの好きな人?って。」 「そうなんですか? お姉さんすごいですね。勘がいい。」 「俺もびっくりしました。 そうだ。百合ちゃんで思い出した。もう呼んでくれないんですか?きいちって。」 「天宮さんが廉って呼んでくれるなら呼びます。」 「……やり方がずるい。」 もう何ヶ月も首藤さん呼びだし、今更 廉 呼びは恥ずかしい。 しかもそれが恋人になってからだと思うと余計に。 「ふふ、その顔可愛いですね。 気が向いた時に呼んでくれたらいいですよ。」 「……はい、そうします。」 「じゃあ、できたので食べましょうか。 多分卵も半熟だと思います。」 「ありがとうございます。 いただきます。」

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