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第58話

「俺が払うって言ったのに、首藤さんお金払いましたよね?なんでなんですか?それほぼ俺の胃袋に入るものたちなのに。」 「まあまあ、お見舞いだと思ってくれれば。」 「それなら来てくれただけで十分です。 これ受け取ってください。」 「嫌です。」 「受け取ってくれないと俺も嫌です。 首藤さんのこと嫌いになります。」 「……それは嫌です。」 明らかに落ち込んだ顔をして、渋々だったけどお金を受け取ってくれる。 よかった。ご飯を作ってもらうのに材料費まで出させるのは、さすがに心苦しかった。 「あ、あの、嫌いにならないのでそんな顔しないでください……。」 まだ落ち込んだままの顔をしている。 「嫌いになるって言われて立ち直れません。」 「あれは嘘で……。」 「嘘ついたんですか?」 「だってそれは首藤さんが……。」 どうすればいいんだろう。 他の方法を考えればよかった。 俺がわたわたしていると、首藤さんが笑い出す。 「ふふっ。すみません、困らせて。」 「……もう、びっくりした。本当に悲しませたかと。」 本当に落ち込んでいるんじゃなくてよかった。 「大丈夫ですよ。すみません、そんな顔させて。」 多分半泣き状態であろう俺の頭を、荷物を持ってない方の手で撫でてくれる。 「ご飯が美味しければ許します。」 「じゃあ許してくれるってことですかね? さっき俺の料理ならなんでも美味しいって言ってましたもんね。」 「美味しいと思いますって言っただけで、別に美味しいと言った訳では……。」 「はいはい。お腹もすきましたし、早く帰りましょう。」 「はい。」 来た時と同様に手を繋ぎ、帰路へつく。 俺はふと隣を見て、不思議に思う。 こんなに見目もよく家事もできて優しい人が俺の事を好きになってくれて、こんなにも至れり尽くせり状態なんてことあるだろうか。 「どうしたんですか? あっ、もしかしてしんどいですか?やっぱり家で待っててもらった方が良かったですね。」 「いえ、そうじゃなくて。かっこいいなと思って。」 「何がですか?」 「首藤さんが。」 「……急にそんなこと言わないでください。」 首藤さんは顔を背けるけど、耳が赤いから照れてるのは丸わかり。 首藤さんが照れてるところは初めて見たかもしれない。 「えっ、首藤さんも照れるんですね。」 「好きな人にかっこいいって言われれば誰でも照れますよ。」 その好きな人、という言葉に俺もなんだか照れてしまう。

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