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第59話
「もう朝食にしては遅すぎますが、準備しますね。
少し待っててください。」
「はい。
……あの、首藤さんがご飯を作ってくれている間になんて申し訳ないんですが、お風呂に入ってもいいですか。」
そういえば昨日入っていないし、その状態で首藤さんとあんなに近距離に居たなんて考えると申し訳ない。
それにこの後も接触がないとは限らないし……。
「もちろんいいですよ。
けど代わりと言ってはなんですが、俺が髪を乾かしてもいいですか?」
「それはむしろ負担を増やしてませんか?」
「以前言ったこと覚えてませんか。」
「俺に触れるための口実ですか?」
「はい。隙あらば天宮さんに触れていたいんです。
それと、天宮さんを甘やかしたい俺のわがままです。」
「じゃあお願いします。」
「はい、喜んで。」
やることが増えても、俺を甘やかすためならむしろ喜んでやるのが俺の恋人さんの特徴らしい。
昨日と今日でよくわかった。
やりたいと言うなら、喜んでくれるうちはお願いしよう。
「……お風呂出ました。」
「ご飯も出来ましたよ。
あ、ちゃんと髪そのままで出て来てくれたんですね。」
いつもは脱衣所にある洗面台のところで、お風呂から出てそのまま乾かしているけど、今日は乾かさずにドライヤーを持ってきた。
それを首藤さんに手渡す。
「はい。
お願いしてもいいですか。」
「もちろんです!
ここに座ってください。」
「え、そこ?」
首藤さんは自分の足の間に座れと言ってくる。
「はい。近くないと乾かせないじゃないですか。」
「……そうですね。」
とりあえず言われるとおりに座って、されるがままになる。
人に触られるのは得意な方ではないけど、首藤さんの手は心地よくて、ドライヤーの熱もあってか眠たくなる。
「天宮さんは髪を伸ばす予定はないですか?」
「何でですか?」
「この長さだとすぐ乾くじゃないですか。
ほらもう結構乾いてきてるし。」
「そんなに髪を乾かすの好きですか?」
「すぐ近くで天宮さんを見られるので最高です。」
「そのうち飽きますよ。
ちなみに髪は伸ばす予定ないです。」
「飽きませんよ、一生。」
もう乾いたのか、ドライヤーを切って真面目な口調で言われる。
「そうですかね?」
「そうです。一生かけて証明するので、一生一緒に居てくださいね。」
少しも予想してなかったことを言われて、心臓が跳ねる。
一生一緒って、そんなのもうプロポーズの言葉にしか聞こえない。
「……プロポーズですか?」
「そんなとこですかね。
あ、もちろん本気のやつはもっと準備してから言いますよ。」
冗談か本気かはよく分からないけど、こんなに当たり前のように“一生”って言ってくれるのが嬉しい。
「さ、食べましょう。
天宮さん甘いもの好きだから、玉子焼きは甘いのにしたんですが、よかったですか?」
「はい、甘いの好きです。」
「よかったです。」
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